新説 とある学園の死闘遊戯
□第13話 新
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気が付けば、黒い侵入者は一人もいなくなっていた。
“窓のないビル”上空の戦闘に皆が注目している間に、全員が退却したのだろうか。
御坂美琴(あの子たち……、何処に行っちゃったのよ……)
もはや何処にも見当たらない妹達の姿に、美琴は不安を覚える。
垣根帝督「心配することねえよ。もう片付いたんだ」
御坂美琴「………?」
初春飾利「片付いた……?」
垣根の言葉に、美琴と初春が聞き返す。
垣根は地面に座り込みながら、最上階付近が半壊した“窓のないビル”を見上げて言い返した。
垣根帝督「ムカつくヒーロー共が事件を解決した。その瞬間を見届けたんだ。俺たちがやるべきことなんざ、もう残ってやしねえよ」
上条当麻によって、アレイスター=クロウリーは討たれた。
一方通行によって、学園都市の閉ざされた未来が切り開かれた。
二人のヒーローによって、事件は解決し学園都市は救われた。
ただ、それだけだ。
垣根帝督「勝利を祝い、吹き抜ける風は気持ちがイイぜ……。一方通行……」
半壊した“窓のないビル”から脱出し、ボロボロの身体を引きずりつつ歩んでくる。
ただし、一方通行は無傷だ。
一方通行「“竜王の顎”っつったか? あの治癒力は半端ねェな」
高山浩太「だが、もう使えぬようでは意味がない。俺たちはしっかりした治療を受けなければな」
手塚義光「ったく、なーんで急に使えなくなってんだか……。一方通行の白い翼も含めてよぉ」
一方通行「知ったことか」
上条の竜王の顎、一方通行の白い翼。
この力は、事件解決と同時に現出が不可能となってしまっていた。
理由は分からない。
しかし、力の鼓動を感じている以上、消えたわけではなく内側に眠っているのだろう。
一方通行(まぁ、そうそう使うような力でもねェからな……)
手塚の背中には土御門が、高山の背中には上条が背負われ、眠っている。
目指すは、カエル顔の医者の病院だ。
冥土帰し「よく生きてたね」
上条当麻「やっぱ、そう思います……?」
一番の重傷患者は上条だった。
全身に広がった骨折。
左耳は回収できたものの、耳ごと削がれていた左目。
完治するまで時間が掛かるだろう。
冥土帰し「お友達と同じように義眼を用意するよ。それ以外なら完璧に治してみせるかr」
上条当麻「いえ、義眼はいいです。眼帯をください」
冥土帰し「ん?」
その言葉に、カエル顔の医者は首を傾げる。
上条は、半壊した“窓のないビル”を見て、気持ちを説明した。
上条当麻「今ある学園都市と、今までの学園都市を忘れないために、この傷を残していたいんです。右目があれば不自由しませんし、今まで通りに前を向けます。だから、その思いを上書くような義眼は、俺には必要ありません」
冥土帰し「……分かった。そういうことなら眼帯を用意しよう」
上条当麻「ありがとうございます、先生」
初春飾利「白井さぁぁん!! ご無事で良かったですぅぅ!!」
白井黒子「初春、わたくしはこの程度で負けるほど弱くはありません。彼氏さんの前で見っとも無いですわよ?」
垣根帝督「あー……、気にすんな。もう見慣れてるから」
初春飾利「うぅぅーッ! 垣根さん、その言い方はヒドいですよーッ」
垣根帝督「わりーわりー」
初春飾利「棒読みーッ」
御坂美琴(あぁ…ははは……。初春さんも大変ね)
上条とは別の病室での出来事。
取り戻された日常が、これ以上ないほど平和に広がっていた。