我ら、篠原家!

□家族対立編 「正義」
1ページ/4ページ


 篠原家にて、床に寝そべる影人へと文哉が話しかけた。

 文哉「この世が“夢”だとしたら、末研はどうする?」

 影人「その呼び方やめろ」

少しだけ間を空け、上体を起こした影人は続ける。

 影人「どうもしないよ。覚めれば俺たちは消えるかもしれないけど、それが運命だろ。夢の住人はそういうもんだ」

 文哉「……強いな…。俺は不安で仕方ないよ」

溜息混じりに腰を下ろした文哉は、続けて影人へ尋ねた。

 文哉「ところで、さっき俺が買ってきた“アレ”は、何に使うんだ? 実験?」

 影人「いいや」

再び仰向けに寝そべる影人は、文哉に返答する。
その顔は、イタズラに成功した子供のようだった。


 影人「誰かさんの戦闘コスチュームの材料だよ。ちょっと細工を仕掛けたからな」







 篠原家より、少々遠場の採石場。

普段は人気のない場所だが、今は二人の男達の戦場と化していた。

洋平の能力で熱された岩肌からは湯気が立ち昇り、あちこちの地面も焼け焦げていた。

そんな状況下で唯一、まったく焼けていないものが三つあった。


 一つ目は、この炎の源である洋平自身。

“自分だけの正義感(オンリー・ラース)”という炎熱能力のマスターである彼の身体は燃えていない。

 二つ目は、洋平の着ている衣類。

いつもなら衣類まで燃やし尽くしてしまうのだが、影人に燃えない衣類(戦闘服)を頼んでおいた洋平は、服が出来上がってから直ぐに袖を通していた。

一体どういう作りなのか、この服は洋平の炎でも燃えることはなかった。


 しかし、三つ目の燃えていないものにも問題があった。

 それは……、


 洋平「な……、なんで……!?」

 皇雅「我が身体が燃えぬ現実に、驚きを隠せぬらしいな」

洋平と向かい合っているマスター、皇雅の身体だった。

 皇雅「貴様と同様に、我も“正義”を名乗っていた。正義のためにマスターの力を利用してきたのだ」

 洋平「………」

 皇雅「我と貴様の違いは、力の使い方と質にある。感情に任せて炎を顕現させ、敵も味方も焼き尽くす貴様では、我に敵う術はない」

いまだに炎の熱が立ち昇る地面を踏みしめながら、驚愕の表情を浮かべる洋平に向かって皇雅は歩む。


 皇雅「我の力は“最硬の心(ガード・ウィルトゥース)”。あらゆる力を前にしても、恐れず立ち向かう力だ。貴様の炎など、我にとっては酸素や風に等しいのだ」
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ