我ら、篠原家!

□家族対立編 「敵陣」
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 その日、洋平は帰宅しなかった。

買い物に出掛けたきり、篠原家に戻ってくることはなかった。

 亮介「……どこいったのかなぁ……」

 高貴「………」

居間でくつろいでいた亮介と高貴は、洋平の帰りが遅いことを心配していた。

既に太陽は沈み、外は夜へと移ろうとしている。

今まで、こんなことはなかったのだ。当然である。

 文哉「ちょっと近場を捜してくる。案外、直ぐそこまで帰ってきてるかもしれないし」

 亮介「あ、俺も行くよ」

文哉が迎えに行き、亮介が同行する。

その後姿に、高貴が感じたのは……

 高貴(何なんだ? この胸騒ぎは……)











 ??「へッへッへ。あいつら、二手に分かれたぜ」

 ??『分かってるわよ。で? あたしはどちらへ向かうべきかしら?』

 ??「答える必要があるか? 樹音(ジュオン)、遊んでいると皇雅のようn……」

 毬愛『その心配は不要よ。それと、名字で呼ぶのはやめなさい。あたしの名前は毬愛(マリア)です』

 ??(どーでもいー……)

篠原家から出てきた二人を、それぞれ別の場所から観察していた二人。

相変わらず傘を持つ少女、毬愛は歩き出す。

それを見届ける少年は、ニヤニヤと笑いながら呟いた。

 ??「残念だな。折角だが、お前の名前を呼ぶ機会はなくなりそうだ」



 高貴「アンタがここで死ぬからか?」



少年の首筋に刃物が当てられ、後頭部には銃口の感覚があった。

少年は、背後に佇む男の存在に気付いていた。故に驚きはない。

 高貴「いつから、俺に気付いていた?」

 ??「最初から」

 高貴「俺の家族に手を出すきか?」

 ??「………」

 高貴「答えろッ!!」

少年の笑顔は、崩れない。

 高貴「洋平をどこにやった……」

 ??「何のことだか」

 高貴「とぼけんじゃねぇよ! アンタらが関わってんだろ? 黙って答えな!」

ここまできて、ようやく少年は口を開く。

しかし、その気味の悪い笑顔は崩れなかった。










 亮介「………」

 毬愛「はじめまして。樹音毬愛と申します」

亮介は洋平を捜していた。文哉とは別行動だった。

故に、この展開は予想していなかった。

 毬愛「どうしました? 篠原家。あたしが名乗ったんだから名乗りなさいよ」

 亮介「……口調がバラバラですね……。名乗る前に、質問に答えていただけますか?」

 毬愛「……何でしょう?」


 亮介「佐野洋平の消失に関係がある方ですか? 貴女は僕の敵ですか?」

 毬愛「……何故、そのような質問を?」

 亮介「勘です」


亮介の一言に、毬愛は一度目を瞑る。

何気なく傘をクルクルと回した瞬間に、



 亮介の身体が、ズタズタに斬り裂かれた。



 亮介「ーーーッ!!!??」

 毬愛「はい。あたしは貴方の敵ですよ? だから何だ? あぁ?」
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