とある学園の死闘遊戯 罪

□第07話 用途
1ページ/4ページ


 倉庫内を走り始める複数の影。

 ジャングルジムのような足場を渡り、セリーアの姿を捜していく。

 一方通行、土御門元春、垣根帝督、海原光貴。

 走る道が何処に繋がっているのか、セリーアは何処を走っているのか。

 終わりの見えない鬼ごっこが始まっていた。







 上条当麻、白井黒子、花一籠目。

 三人は壁際の牢屋を全て周るため、全ての足場を壁側に向かって走っていた。

 空間移動を使わないのは、それだけ足場の数が複雑であり、思うように座標を計算できないからである。

 更に、上条の移動手段は車椅子だ。

 それほど速く動けるわけでもないため、どうしても時間が掛かってしまう。

上条当麻「ちっくしょう! 脚の骨が軋まなければ、こんな足場なんて楽勝だってのに!」

白井黒子『喋る余裕があるのでしたら移動力を上げてくださいなー!』

 何処からか白井の声が反響して聞こえた。

 倉庫内では近くにいなくとも、声が反響して響いているらしく誰かにも聞こえているようだ。

上条当麻「くぅッ! せめて、どの道が何処に繋がってるのかが分かれば……ッ」

 そう思った矢先、上条の前方に何かが飛来した。

 鋭い斬撃のようなものがビュンッと通り過ぎ、上条の行く先の足場を切断してしまった。

上条当麻「ーーーなッ!?」

 足場が無くなり、別の分かれ道を進むしかなくなる。

上条当麻「ちっくしょう!! セリーアが遠距離から邪魔してんのか!?」

 飛び道具も持たない上条に反撃の手段はない。

 大人しく別のルートを進んで行くしかないのだった。







 別のルートでは、花一も上条と同じ目に遭っていた。

 ビュンッと飛んでくる斬撃のようなものが、花一の進む先の足場を壊していく。

花一籠目「わわッ!! ま、また……ッ」

白井黒子『花一さん!! 大丈夫で…きゃッ!?』

 白井の声が聞こえた途端、同じ方向からビュンッという音が聞こえる。

 白井も同じ目に遭っているのだろう。

花一籠目(向こうからは、私たちの動きが分かってるんだ。どんどん行く先が限定されてる……)

 しかし、ここで思わぬ展開になる。

花一籠目「……あ、あれ?」

 花一の目の前に広がるのは、牢屋の前を移動するための大きな廊下。

 つまり、牢屋が並んでいる場所の真正面である。

白井黒子『おや? ここは……』

上条当麻『よしっ、何とか辿り着いたぜ!』

 反響した声を聞く限り、上条と白井も同じように行き着いたらしい。

花一籠目(誘導ミス……? それとも、最初から最短ルートを渡らせてた……?)

 それからというもの、限定されていくルートを進めば進むほど、都合よく牢屋の前に出ることが出来たのだとか。







 巨大貸倉庫天井付近。

 携帯電話を顔と肩に挟んで、誰かと通話している少女がいた。

 右手には双眼鏡を持ち、倉庫内を走り回る上条たちを観察している。

青髪ピアス『初陣、頑張っとるん? ご苦労さんやなぁ』

????「話してる余裕はありません。切っても構わなくて?」

 少女が立つ足場は、真っ黒な液体を固めた物だった。

 その液体が入ったドラム缶が少女の背後に用意されており、少女は液体をフワフワと浮かばせて操っている。

????「………そっちはダメ…」

 双眼鏡で確認すると、上条が牢屋へのルートから遠ざかろうとする。

 すぐさま液体を鋭利な刃物の形に変え、行く先の足場を切断した。

 行き先を失った上条は、仕方なく別ルートを回り始める。

 おそらく、その先が牢屋の正面になるだろう。

青髪ピアス『そんじゃ、邪魔にならへんように失礼するで? お帰り待っとるよ』

 少女の通話が終わり、目の前の任務に集中する。

 黒い液体……油性オイルを操る、長点上機学園の制服を着た少女。

 非公認組織バブルの新メンバーとして、全力で上条たちをサポートする。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ