とある学園の死闘遊戯 罪
□第04話 人選
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第七学区のリフレクトパーク。
一方通行と上条は、ソンシャンに呼ばれて駆けつけていた。
ソンシャン「お待ちしておりました」
上条当麻「…ソンシャン」
二人が席に着くと、一方通行が尋ねる。
一方通行「トリックスターのことについて重要な仮説が立てられる、ってのはどォいう意味だ」
ソンシャン「文字通りです。ですが、俺の仮説であることを忘れませんように」
そう言ったソンシャンは、テーブルの上に一枚の札を出す。
魔術的記号を含んだ霊装なのか、まるで立体映像のように文字が空中に現出する。
上条当麻「……これは?」
ソンシャン「今現在、捜索中の全国指名手配犯の氏名です」
一方通行「ハッ、一体何万人いるンだっつーの」
空中を旋回する文字の中から、一方通行たちの前に文字が並び始めた。
並んだ文字は、おそらく一人の指名手配犯を表しているのだろう。
上条当麻「英語じゃないのか……。これ、何て書いてあr」
一方通行「ラテン語で“セリーア=シルッキー”だ」
上条当麻「お、おぉ……。さすがは学園都市最高頭脳……」
感心する上条を無視して、一方通行はソンシャンに再び尋ねた。
一方通行「これが何なンだ。捕まえたトリックスターなンざどォでもイインだよ」
ソンシャン「……覚えていますか? セリーアの出身国」
一方通行「あン?」
上条当麻「えーっと……、確かブラジル人だろ? 日系だとかで肌は白かったけど……」
一方通行「…………」
それが何を意味するのか分からない上条は、一方通行に視線を送った。
一方通行は、目の前で浮かぶセリーアの名を眺めて呟いた。
一方通行「………ポルトガル語…」
ソンシャン「気付いたようですね」
疑問符を浮かべる上条にも分かるように、ソンシャンは簡潔に説明を始めた。
ソンシャン「セリーアはブラジルのバイーア州が出身です。その国で札付きになるならポルトガル語で手配されます。全国指名手配になった場合は、世界共通として一般的な英語で手配されます」
一方通行「簡単に言っちまえば、ラテン語で全国指名手配されるケースは珍しいンだろ」
ソンシャン「ヒドく稀ですね」
ラテン語で手配されることが普通でないことは分かった。
しかし、それがどうしたというのだろう。
上条当麻「それが、何か意味することでもあるって言うのか?」
ソンシャン「では、次にこちらを見てください」
ソンシャンは、胸元からボールペンを取り出して小さなメモ帳に筆を走らせる。
それも誰かの氏名のようだが、空中を飛ぶ文字から抜粋しない以上、全国指名手配犯ではないのだろう。
一方通行たちに見えるように差し出したメモ紙には、セリーアと同じく英語ではなかった。
上条当麻「もしかして、これもラテン語か? 一方通行、何て書いてあるんだ?」
一方通行「…………」
一方通行は、まるで嫌なものを思い出したかのような形相でソンシャンを睨んだ。
そこに書かれていた名前を、一方通行は口にした。
一方通行「……“スヴィル=ペァゴーマ”。今すぐにでもブチ殺したくて仕方がねェクソ野郎だッ」
上条当麻「………ッ」
学園都市を潰そうと、魔学サイドを作り上げた張本人。
世界中から捜し集めた六人のトリックスターの、頂点に君臨している者。
不機嫌になってしまった一方通行に代わり、上条がソンシャンに尋ねた。
上条当麻「それで、スヴィルの名前がどうしたって言うんだよ。さっきのセリーアと、何か関係があるのか?」
上条の問いに答える前に、逆にソンシャンが問い返してきた。
ソンシャン「不思議に思いませんか?」
一方通行「………何がだ」
ソンシャン「この広い世界で、どうやってスヴィルはトリックスターを捜し出したのか……」
上条当麻「捜し出した? ちょっと待てよ。捜すも何も、魔学サイドを作ってトリックスターって命名したのはスヴィルだろ? 世界中飛び回って、適任だと思った奴らを勧誘してきたんじゃ……」
そこまで言って、上条は引っ掛かりを覚えた。
そう言えば、スヴィルがトリックスターを集めた件について。
“捜し出した”というばかりで“選び抜いた”とは表現されていない。
まるで最初から……、魔学サイドが出来上がる前からトリックスターの六人が決められていたかのように……。