とある学園の死闘遊戯 罪

□第05話 食堂
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 初春は、ガチガチと歯を震わせながら恐怖を感じていた。

 ここはスキルアウトの派遣要員が暮らしている部屋の地下室。

 薄暗い部屋の中で、何人もの風紀委員や警備員が縄で縛られ拘束されているのだ。

 初春の目の前では、細身の男性が機嫌良く食事をしている。

 しかし、彼が食べているのは普通の料理ではない。



 つい数分前まで拘束されていた、風紀委員の少女だった。



 部屋中に血生臭い悪臭を漂わせ、テーブルを真っ赤に染めながら食事を続けている。

 グラスに注がれているのは、人間の生血と脂肪を混ぜただけのグロテスクな液体。

 何の躊躇いもなく飲み下し、既に息絶えた少女の遺体を切り分けて口に運ぶ。

 その様は、地獄絵図以外の何ものでもなかった。

細身の男「ふぅ……、ごちそうさま」

 骨も残さず噛み砕くが、何故か頭部だけは無傷で残す。

 首の切断面を舐めながら、学生証に目を通す。

細身の男「“天野海月(アマノクラゲ)”さん、でしたか。とても美味でした…………、が」

 チラリ、と拘束している風紀委員や警備員へと視線を移す。



細身の男「………まだ、空腹です…」



 その一言が引き金になる。

 初春の背後から、一斉に絶叫が響き渡った。

 逃げようと足掻く者、泣き叫ぶ者。

 失禁する者、助けを呼ぶ者。

 中には、舌を噛み切って自害しようとする者。

初春飾利「ヒュー……ッ、ヒュー……ッ」

 声も出せずに泣きじゃくる初春は、目の前に立つ男を人間だと思えなかった。

 本物の悪魔か化け物だと、信じて疑えなかった。

細身の男「そうですねぇ……。では“踊り食い”といきましょうか! 腕脚を切除して“だるま”にした後に、血抜きせずに噛り付きましょう」

 食べ方を呟く男が、次の料理(人間)を選ぼうとする。

 その時だ。





 地下室の天井が、一気に崩れ落ちた。





細身の男「ーーーッ!?」

 埃や土煙が舞い上がり、一瞬で視界が奪われる。

細身の男「な、何が……!?」

 地上の玄関口が開いたらしく、一気に喚起される。

一方通行「晩餐会の会場はァ、こちらで合ってますかァ〜?」

細身の男「………おやおや、お客様を招待した覚えはないのですが…」

一方通行「ハッ、勘違いしてンじゃねェよ……」

 埃の嵐が晴れ渡り、天井のなくなった地下室が見渡せる。

 そこには、男も見覚えのある数人の少年たちが立っていた。





一方通行「俺が主催者だ! 今日、この場所はテメェにとって“最後の晩餐”なンだよォ!! グゥラーァァァッ!!」

グゥラー「………これはこれは、ようこそいらっしゃいました。アナタが私のメインディッシュです!!」





 一方通行を援護する形で、上条が右隣りで身構える。

上条当麻「危なくなったら呼んでくれよな。援護してやる」

一方通行「そっちこそ、気安く頼ンじゃねェぞ」

 治安崩壊事件の最終劇が、既に幕を上げていた。
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