とある学園の死闘遊戯 罪

□第06話 暴食
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 被害者を救出する組は、いくつかに分裂していた。

 手配しておいたグループのバスには、容体が危険な者たちを優先し、先に病院へと向かわせた。

 これには、海原が付き添っていく。

 そして、バスに乗せることが出来なかった被害者たちは土御門と垣根が徒歩で送った。

 土御門は地上から、垣根は空中から、それぞれ安全を確認する形である。

垣根帝督「初春も無事に救出。黄泉川っつー警備委員も土御門と一緒にいるみてえだし、とりあえずは安心か……」

 垣根は、花一の友達を忘れているわけではない。

 しかし、この場に見当たらないことを確認した上で、きっと海原のバスに乗っているのだと願うしかなかった。

垣根帝督「………助けられなかったなんて考えねえぞ…。皆で、無事に帰るんだ……」

 その望みが既に叶わないことを、垣根はまだ知らない。







 土御門と黄泉川の前に、白井が空間移動で現れた。

土御門元春「カミやんはどうだった?」

白井黒子「…………申し訳ありませんが、病院へは向かっておりませんの」

土御門元春「何ッ!?」

 その言葉に驚く土御門だが、対する白井の表情はキリッとしていた。

白井黒子「“亡き親友の言葉を思い出した”と、途中から進路方向を変えましたの。わたくしは、こちらに戻るようにと言われましたので」

土御門元春「………そうか…」

 グゥラーの居場所へ向かう前に、一方通行へと浜面から連絡があった。

 内容は、既に悪夢のような晩餐会が始まっていること。

 そして、上条への助言だという。

土御門元春「何を言われたのかは聞いていないが、ここでカミやんが行動に出たんなら問題ない。ヒーローは、必ず悪を討つもんなんだぜい」







 第七学区のとある路地裏。

 マンホールの中からグゥラーが顔を出した。

 両手が使い物にならないため、這いずって出てきた体勢になる。

グゥラー「ふぅ……、何とか、ここまで逃げ延びました……」

 やっと落ち着いた状況になり、安堵を隠せない。

 しかし、そのグゥラーへと近付いていく足音があった。

グゥラー「…………ッ!?」





上条当麻「“ピンチになったら、とにかく待ってろ。お前の不幸は必ず幸運を呼ぶ”、か……」





 右手を失った上条が、グゥラーの真正面に姿を現した。

 幻想殺しを失ったものの、切り離された右手に力は宿っている。

 右手を持っていれば、不幸であることに変わりはない。

 現に、右手を切り離されても白井の空間移動の恩恵を受けなかったのだ。

上条当麻「その通りだな、浜面。唯一の力を失った俺が、この広い学区内で宿敵と再会することが、どれほど低確率なのか考えるまでもねぇよ」

 文字通りの無能力者となってしまった上条が、切り離された幻想殺しを持っている以上、その不幸は続く。

 “ピンチ”と言えるこの状況で、浜面は“待っていろ”と助言していた。

 その結果、上条は一方通行から逃亡したグゥラーと再会することになった。

上条当麻「普通、この状況は“不幸”って言えるんだろうけどなぁ……。ついに俺もおかしくなっちまったのかなぁ……」

 上条の右手首の傷口から、パラパラと何かが零れ落ちていく。

 それは乾ききった血液ではなく、ボロボロになった皮膚でもなく……。





上条当麻「この状況が、最高に“幸運”だとしか思えねぇんだよぉぉぉおおおおおおッ!!!!」

 幻想色の輝きを放つ、何枚もの鱗だった。





 上条の右手首から、竜王の顎(ドラゴンストライク)が再臨した。
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