とある学園の死闘遊戯 罪

□第01話 出座
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 風紀委員第177支部。

 一方通行たちの前に、トリックスターを名乗る女性が姿を現した。

 サラサラと光る黄緑色の長髪を腰まで伸ばした、真っ白なドレスの外国人女性。

 窓辺に腰掛け、その手に持つ日傘をクルクルと回して笑っている。

一方通行「トリックスターだと?」

????「そうですよ、うふふ。はじめまして〜♪」

 上条や土御門、海原と白井、垣根や花一も女性に釘付けになる。

 まさか、トリックスター側から顔を出してくるとは思っていなかったからだ。

一方通行「わざわざ捕まりに来ました、ってわけじゃねェンだろ? 何のつもりだ」

????「挨拶ですよ、挨拶。これから思う存分遊び尽くす玩具の顔を、じっくり見に来ただけなんです」

垣根帝督「はあ……、黙って聞いてりゃ誰が“玩具”だコラ。女だからって手加減すると思ったら大間違いだぜ?」

????「あらあら、怖い怖い。なら……」





????「しばらく眠ってて」





 ドサッ、と垣根が無抵抗に床に倒れた。

土御門元春「ーーーッ!? 垣根!!」

一方通行「テメェ……ッ、何しやがったッ!!」

 垣根の傍に駆け寄った海原が状態を確かめる。

海原光貴「………気絶しているだけです。怪我も見当たりません」

????「だから言いましたよ? “しばらく眠ってて”ってね♪」

 これが、彼女の力なのだろうか?

 しかし、未元物質を有する垣根に届くほどの異能の攻撃では、得体が知れなさ過ぎる。

上条当麻「魔術師、なのか……?」

????「あらあら、アナタは魔術の存在を知ってる方でしたのね?」

一方通行「理解してるヤツばかりじゃねェが、その存在だけなら全員知ってンだよ」

????「あら、そうでしたのね」

 クルクルと回していた日傘を持ち直し、目の前でフワッと振るってみせる。

 一瞬だけ姿を暗ましたものの、彼女は真後ろの外へと飛び出していた。

白井黒子「危ないッ!!」

花一籠目「落ちるッ!!」

 二人が声を上げた瞬間、女性は窓の外へと転落した。

上条当麻「な、何やってんだ!?」

一方通行「チッ」

 慌てて窓辺に駆け寄って、下方を覗き込む。

 しかし、そこには誰もいなかった。

上条当麻「あ、あれ……? 消えた……?」

一方通行「スヴィルの時みてェな、立体映像だったわけじゃねェ……。どォなってやがる……」

 分からないこともあったが、同時に分かったこともあった。

 今までは、ただの特殊な犯罪者ばかりだったトリックスターの中に、初めて魔術師が現れたのだ。

上条当麻「トリックスター全員が全国の指名手配犯で、その中の魔術師ならソンシャンが見つけてくれるはずだ。すぐに連絡する」

一方通行「……おォ」

 この時、一方通行は第二十三学区でステイルの言っていたことを思い出していた。



ステイル『世界各地で、魔術的記号を意味する核霊装が感知されている。正確な在処は掴めていないが、奇妙なことに陣を形成する形で組まれている様なんだ』



 陣の中心は学園都市。

 魔術的問題ならば、トリックスターとは関係ないと思っていたのだが、魔術師のトリックスターが現れてしまえば話は別だ。

一方通行「まさか……。グゥラーの事件と平行して、また別の事件が進ンでやがったのか……」

 まだ同じ事件のものだと決まったわけではないが、一方通行は確信に近いものを感じていた。



 ステイルが偵察に来た、世界規模の魔法陣。

 その中心が学園都市。

 そして、魔術師を名乗るトリックスターの存在。



 これらは、確実に同じ事件として結び付くだろうと……。
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