とある学園の死闘遊戯 罪

□第02話 混乱
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 青い空、白い雲。

 ありきたりな表現だが、これが最も正確と言えるほどの晴天だった。

 大海原の潮風に航路を任せる海賊船。

 船長室にて、一方通行は目を覚ました。

一方通行「………寝ちまったか…」

 机に伏せる形で眠っていたため、身体が痛む。

 船室から出ると、上条と顔を合わせた。

上条当麻「あ、起きたのか。おはよう、一方通行」

一方通行「……なンで起こさねェンだ…」

上条当麻「起こしたらキレるだろ?」

 そんな会話を続けていると、表の方から声が聞こえた。

インデックス「あくせられーたー! 島が見えたんだよー!」

上条当麻「……だってさ。上陸しますか? 船長」

一方通行「当たり前だっつーの」



 大海原を進む海賊船。

 赤い眼窩の髑髏マーク。

 海賊王・一方通行が率いる“ベクトル海賊団”の上陸である。



一方通行「……あン?」

上条当麻「どうした? 一方通行……」

 違和感。

 一言でいうならば、それを感じていた。

一方通行「……いや、何でもねェよ」







 島に上陸し、辺りを見回す。

 土御門や海原、結標とインデックスも港に降り立ち、一方通行と上条に続く。

一方通行(………なンだァ…? このモヤモヤした気持ちの悪りィ感覚は……)

 一方通行は、今までの海賊人生を振り返る。

 上条と出会ったことで、一度は仲間たちを失ったこともあった。

 “グループ”という名の盗賊連中と出会い、新たな仲間として迎えたこと。

 海軍と海賊王たちで戦争を起こしたことだってあった。

 その思い出が、何か心に引っ掛かりを覚える。

上条当麻「おい、大丈夫か? 何か顔色悪いぞ?」

一方通行「……余計な心配なンざ不要だ」

 そう言い返すものの、強がりに聞こえなくもなかっただろう。

一方通行(……クソッタレがァ…。こンなところで、倒れてる場合じゃねェンだぞ……)

 頭がボーっとして、足がフラフラする。

 そんな状態でも、まだ一方通行には余裕があった。

 今の自分の思いに疑問を持てる。

一方通行(………いや、別に急ぎの用事があるわけじゃねェよな…。なら、何で俺は今……ここで倒れちゃダメだって思ったンだ……?)

 何か、別のこと……。

 大事なことを忘れている気がする……。

一方通行「………あァ…、ダメだ……」

上条当麻「一方通行?」

 グラッと、一方通行の体が傾いた。



一方通行「…思い出せねェ………」

上条当麻「ーーーッ、一方通行ッ!?」



 倒れていく体。

 駆け寄ってくる上条。

 その顔を見ながら、また違和感を覚えた。

一方通行(………上条…。オマエ、左目の眼帯はどォした……? いや……、眼帯なンて、してなかった…か………?)

 倒れたのか。

 倒れる前に支えられたのか。

 それすら分からないまま、一方通行は意識を手放す。



 何だか、とても眠いと目を閉じてしまう。

 今はただ、もっと眠っていたかった。
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