とある学園の死闘遊戯 罪

□第03話 人形
1ページ/4ページ


 カエル顔の医者の病院。

 美琴は病室に帰ると、荷物をまとめ始める。

初春飾利「あれ? 御坂さん、今日退院でしたっけ?」

御坂美琴「『ううん。何か、突然退院してもいい、って言われちゃって』」

初春飾利「お体の方は大丈夫なんですか?」

御坂美琴「『たぶん大丈夫よ。あんまり自覚ないし』」

 荷物をまとめた美琴は、初春に別れを告げて病室を去っていった。

初春飾利「……確か昨日は、あと一週間は入院だ、って言ってたと思うんだけどなぁ……」







 常盤台中学。

 月曜日を迎えたため、白井と花一は登校している。

 休み時間になり、二人は教室を出て廊下を進む。

 目指すは、あまり人が立ち止まらない階段の踊り場。

白井黒子「しっかり休まれたようで安心しましたわ」

花一籠目「ご心配お掛けしました」

白井黒子「一方通行さんのお体も回復して差し上げたようで、当人も喜んでいることでしょう」

 昨日のことを思い出す。

 一方通行に頭を撫でられ、能力を褒められたことを。

花一籠目「え、えへへ……」

白井黒子「………花一さん、貴女…」

花一籠目「はい?」





白井黒子「一方通行さんに恋してません?」





 ベタにも、顔がボンッと赤くなる花一。

花一籠目「ななッ!! ななななななな何をいいいいい言ってッ! ててて、ててッ!!」

白井黒子「お、落ち着いてくださいな! それでは認めてるも同然ですのよ!」

花一籠目「みみみみ認めてなんかッ………あれ…?」

白井黒子「……?」

 不意に落ち着きだす花一は、何かに気付いて釘付けになっている。

 白井も、花一の視線を追って振り返る。

 そこは階段の下層であり、もちろん誰もいない。

白井黒子「どうしましたの?」

花一籠目「い、いえ……。一瞬、御坂様が見えた気がしまして……」

白井黒子「お姉様が? お姉様は現在入院患者ですのよ? ここにいるはずがありませんわ」

花一籠目「そう、ですよね……」

 花一が一瞬だけ捉えた美琴の姿。

 すぐに見えなくなってしまったものの、そこには確かに存在していた。

 白井と花一の死角にて、美琴が常盤台中学の廊下を歩いていく。







 常盤台中学、学舎の園。

 海原光貴は胸を躍らせていた。

 というのも、実は待ち合わせ中なのである。

 噴水の広場にて海原が待っていると、歩み寄ってくる人影がいた。

 御坂美琴である。

海原光貴「御坂さん!」

御坂美琴「『こんにちは、海原さん』」

 思わず駆け寄る海原に、美琴は挨拶をする。

海原光貴「入院されていましたが、もうお体の方は大丈夫なのですか?」

御坂美琴「『前々から大丈夫だって言ってるのよ、こっちは。入院だって大袈裟なんだから』」

 美琴の人工舌による、くぐもった声にも余計な反応はしない。

 このような形になっても、美琴は美琴であることに変わりはないのだから。

海原光貴「ところで、自分にどういった用件でしょう?」

御坂美琴「『う〜ん……。この場で言うには問題あるから、多少は省くわ』」

海原光貴「…?」

 ここではマズい内容なのか、誰かに聞かれてはマズいのか。

 美琴は、不意に声を小さくして話し始める。

御坂美琴「『新しく出てきたトリックスターの件よ。病院で、見かけたかもしれない』」

海原光貴「…………御坂さん……」
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ