とある学園の死闘遊戯 罪
□第05話 覚醒
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AIM拡散力場。
結標淡希は焦っていた。
場所は第十七学区の廃研究所。
目の前で、かつての仲間が殺されかけているというのに何もできない。
結標淡希「どうすればいいのよ……! そもそも、何で誰も出ないのよ!!」
結標は携帯を片手に憤る。
何とか助けを呼ぼうと電話を掛け続けているのだが、どういうわけか誰も応答しない。
結標淡希「……まさか、あの女……。この戦いを邪魔させないために、この場所に何らかの力を働かせているんじゃ……ッ!!」
海原の皮膚を剥がし、エツァリとして対峙している戦況。
美琴から、最後の攻撃が放たれようとしていた。
結標淡希(なら、私がこの場所から離れて連絡を取れば!! でも、もう間に合わないッ!!)
気付くのが遅すぎた。
座標移動を行う前に、その攻撃は放たれてしまった。
その瞬間、結標の携帯からパキーンッと何かが砕ける音が響いた気がした。
結標淡希「………え?」
ドサッ、とエツァリが地に倒れ伏した。
電撃を放った美琴の前に、まだ立ち尽くす影が存在した。
しかし、それはエツァリではない。
この場所を垣根から聞いて駆け付けた、ツンツン頭の少年だった。
上条当麻「……何やってんだ、御坂」
御坂美琴「『…………』」
幻想殺しの少年、上条当麻は睨みつける。
彼の登場に、エツァリは必死で声を出す。
エツァリ「い、今の御坂さんは、御坂さんですが……、御坂さんでは……」
上条当麻「安心しろ、事情は分かってる。これがアヴァリの差し金で、御坂が正気じゃなくなってるのもな」
エツァリ「…………み、御坂さんを……」
エツァリ「……御坂さんを、助けてくださ、い……」
涙を流して、ついにエツァリは気を失った。
上条当麻「……今の、聞こえたか」
御坂美琴「『聞こえたわよ……。だから?』」
上条当麻「自分が一番痛いんだ。自分が一番苦しいんだ。自分が一番悲しいんだよ。なのに、最後の最後までお前の心配してたぞ。何とも思わねえのか!!」
御坂美琴「『あっついわねー、熱血漢てやつ? 私の目的はそいつと戦うことなの。分かる?』」
上条当麻「………確かに、お前はもう御坂じゃないな…」
拳を握りしめて、上条は一気に駆け出した。
御坂美琴「『言っとくけど、この体は御坂美琴本人のものよ? 果たしてアンタに殴れるかしら?』」
上条当麻「理解してねぇのかよ。さっきの言葉、何も海原だけに言ったわけじゃないんだぜ?」
御坂美琴「『……?』」
勢いを殺さず、右腕を振りかざす。
美琴は悟った。
“本気で”殴る気だと。
御坂美琴「『ーーーッ!!』」
上条当麻「御坂だって痛いはずだ。御坂だって苦しいんだ。御坂だって悲しいんだ! 何でテメェみたいなクソ野郎の、操り人形にならなきゃいけえねぇんだ!!」
咄嗟に電撃を放って応戦するが、突き出された右拳に打ち消される。
幻想殺しが、美琴の顔面に迫り来る。
上条当麻「美琴の体から出て行け!! 二度と皆を、傷つけるなぁぁぁあああああ!!!!」
ガァンッ! と美琴が殴り飛ばされる。
それと同時に、何らかの異能が破壊された音が聞こえた気がした。