とある学園の死闘遊戯 罪
□第06話 悲涙
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カエル顔の医者の病院。
上条が美琴を連れて駆けつけた時、中庭で起こっていた騒ぎの件で病院内は慌ただしかった。
刃のような植物が生えていたとか、金属バットを片手に立ち向かった少女がいたとか、突然巻き上がった竜巻によって全てが片付けられたとか。
しかし、中庭の様子を見てみれば、そんな様子は既に何処にも見られなかった。
刃のような植物は、雑草もろとも根こそぎ消失。
気を失っていた花飾りの少女がいたものの、金属バットを持った少女は何処にもいなかった。
上条当麻「………一体、何があったんだ…」
その戦況の真ん中にいた者しか、その事実は分からない。
第七学区のとあるビルの屋上。
貯水タンクの影に隠れる形で、佐天涙子は相園美央の手当てを受けていた。
相園美央「はい、おしまい」
パシッと相園が軽く佐天の背中を叩く。
佐天涙子「ひぎゃッ!! あ、相園さん……、そこ、傷口……」
手当が終わり、背中一面に包帯を巻いた佐天は服を着る。
着替えが終わり、アウレオルスが姿を現した。
佐天涙子「ありがとうございました、アウレオルスさん」
アウレオルス「……哀然。悲しいな、少女は……」
その言葉に、佐天は笑ってみせた。
佐天涙子「これで良いんですよ。初春も、きっと“これから”より“今まで”の方が……」
相園美央「アナタたちのチームワークや絆は痛いほど理解してるわ。それでも、本当に良かったの?」
アウレオルスの力でピンチを切り抜けた佐天は、更に二つほどお願いをした。
一つは、佐天に与えた能力を解除してほしいこと。
もう一つは、初春の記憶から“佐天が駆け付けた事実”を抹消することだった。
アウレオルス「今なら間に合う。この力は絶対ではないぞ」
佐天涙子「いえ、これで良いんです」
その表情からは、一切の後悔が見られなかった。
佐天は、自分の決断に悔いを感じていない。
佐天涙子「だって、非公認組織バブルは、あくまで泡のように流れるべし。そういう条件の上で、私は動いているんです」
アウレオルス「…………」
佐天涙子「私が守りたいのは、御坂さんや白井さん。そして初春が笑っていられる世界と日常。それ以上なんて、求めていませんから」
眩しいほど明るい思考と笑顔に、アウレオルスは心から称賛を送る。
アウレオルス「快然。その心、忘れるべからずなり」
上条を通じて、常盤台中学の白井と花一に連絡が入る。
美琴と初春が、再び傷を負って診察中だと。
白井黒子「花一さん。貴女は一方通行さんに連絡して、直ぐに合流してください。現状の報告を含めた、詳しい情報交換を!」
花一籠目「わ、分かりました!」
第七学区の病院へと空間移動した白井。
花一も、すぐに携帯で一方通行に連絡を取る。
一方通行『どォした?』
花一籠目「じ、実は……」
花一は、美琴と初春の件を簡潔に話した。
そして、それがトリックスターの件ではないかということも。
一方通行『さっき上条ン家の居候から相手の情報を聞き出した。そン時に垣根から連絡も貰ってる。順調にいけば、もうすぐアヴァリを無力化できるはずだ』
花一籠目「そ、そうなんですかッ!?」
一方通行『悪りィが、今回の敵は俺と相性が悪すぎる……いや、上条でなくちゃ倒せねェ敵だ。せめてヤツの居場所を見つけ出して、上条に託して終わらせる』
花一籠目「わ、分かりました。では……」
アヴァリ「何のお話〜? お姉さんにも教えてくださいなぁ♪」
花一の背後から、背筋を震わせる声が聞こえた。
その声は、電話の向こうの一方通行にも聞こえたらしい。
一方通行『……オイ、今何処にいやがる』
花一が返答することはなく、プツッと通話は切れてしまった。