とある学園の死闘遊戯 罪
□第01話 ……
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その場の皆は、何も言うことが出来なかった。
たった一人を除いて……。
一方通行「消え失せろ、チビガキが…」
花一籠目「ーーーッ」
一方通行の表情には、今まで戦ってきた者たちに向けているもの以上の、この上なく鋭い目付きが形作られていた。
怒り以外の何物でもない。
一方通行「この俺に、二度とその面見せるなッ! 出て行けェッ!!」
花一籠目「ーーーぅッ、ぅぅ……ッ」
花一は泣き声を必死でこらえながら、一方通行に背を向けて走り去った。
手で口を押えて、溢れ出る涙を拭うこともなく。
時は逆上る。
アヴァリを倒した一方通行たちは、陣消滅の件の後始末をつけるため帰還するステイルを、第二十三学区まで送りに来ていた。
ステイル「一応“貸し”としておこうか。トリックスターの中には魔術師が含まれている以上、この件もこちら側に報告せざるを得ないんだ」
上条当麻「貸しだなんて考えなくていいって。こっちはこっちで何とかやっていくからさ」
一方通行「その代わり、また魔術師のトリックスターが現れやがったら、解説くれェは寄こしてもらうぜ」
ステイル「……そうだね。あの子の力を、こんなことで使わせるのも癪だ」
あの子、とはインデックスのことだろう。
アヴァリの件で、間接的であっても錬金術の知識を解説させたことが引っかかるようだ。
敵の具体的な連絡網が分からない以上、あまり関わらせたくないのが本心だ。
上条当麻「ところで、小萌先生はいいのかよ。ステイルの前じゃ笑顔で送ってくれたけど、今頃寂しくて泣いてるかもしれないぜ?」
ステイル「………あの人の件になると、君は不気味なほど饒舌だな…。不愉快だよ」
ステイルがイギリスに帰還する飛行機と入れ違いで、学園都市に降り立った者がいた。
既に腰痛を患っているらしく、杖を突いた老人の男性がヨロヨロと歩みを進める。
????「ふぅ〜……、さて。あの少年を見つけねばならんのぉ……」
とある少年に会うために、老人は学園都市にやってきた。
ソンシャンは尋問していた。
目の前には、全身を拘束されたセリーアとグゥラー。
アヴァリの意識が戻っていたなら、ここにアヴァリの姿もあっただろう。
しかし、先に海原から情報を得ていたソンシャンは口を開く。
ソンシャン「与えられた使命というもの。聞かせていただきます」
セリーア「…………」
グゥラー「…………」
ソンシャン「おや、何やら勘違いしてますね」
ソンシャンは、手元に用意していたスイッチを操作する。
その瞬間、二人を拘束していた器具に電流が走る。
弱い程度だが、防ぐ術もない。
セリーア「ーーーがッ!!」
グゥラー「ーーーぐッ、ぅッ」
ソンシャン「命令してんだよ、さっさと吐け」
必要悪の教会の一員として、非道であることに心は痛まない。
ソンシャンは、今後の対策を手に入れるためにも、一滴の容赦も持ってはいない。
垣根は初春のお見舞いに訪れていた。
そろそろ退院できるらしい。
垣根帝督「第二位はまだ退院できずか……。気の毒だな」
御坂美琴「『うっさい。ていうか、何で入院期間が延びてるのよ……』」
初春飾利「……きっと、まだ検査が残ってるんですよ」
美琴は、何も覚えていなかった。
病院を抜け出したことも、海原と戦ったことも。
でも皆は、それを教えるつもりはない。
海原から、言わないでほしいとお願いされたからだ。