とある学園の死闘遊戯 罪

□第02話 ‥‥
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 花一は泣いた。

 泣きながら第七学区内を走り抜けた。

 何処をどのように走ったのかも分からず、ただただ我武者羅に走り続けた。

 そして気が付けば、まるで巨大なジャングルジムを思わせる、立体的に組み合わさった風力発電のプロペラが並んでいた。

 太陽光発電や風力発電に頼れない地下街で扱われる大量の電力を補うために設置された、 ビル30階分の高さを持つプロペラ群。

花一籠目「………ここは…」

 第七学区に隣接した、学園都市で最も小さな学区。

 花一は、第二十二学区の地上に立っていた。

 地上、というのも、この学区は地下施設が発展しているための区切りである。

 故に学区の面積は約2キロ四方の広さしかない。

花一籠目「…………グスッ……」

 一人になり、静かになり。

 また先ほどのことを思い出してしまう。

 友達も兄も失い、仲間たちからも切り離された。

 例え、花一を思ってのことだとしても、そのショックは大きかった。

花一籠目「ぅぅ………、グスッ……」

 そんな花一へと、背後から近付く影があった。







 第七学区のリフレクトパーク。

 コンビニで缶コーヒーを買い、あっという間に飲み干した一方通行は、何の目的もなく散歩を続けていた。

 食事処=新入生=に入店し、適当に席を探していると声を掛けられた。

黄泉川愛穂「お、一方通行ー!」

一方通行「あ?」

 声に振り返ってみれば、黄泉川と芳川と打ち止めと百合子。

 そして接客中(ただしザボってる様子)の番外個体。

 つまりは、一方通行の家族が勢揃いしていた。

一方通行「なァにやってンだよ。仕事が休みなら寝とけっつーの」

芳川桔梗「あら。じゃあお言葉に甘えて帰ってからお昼寝でも……」

一方通行「オメェには言ってねェよ。つゥか、いっつも寝そべってるだろォがクソニート」

黄泉川愛穂「あっはは、大丈夫大丈夫。これくらいでダウンするようじゃ警備員なんて勤まらないじゃんよ」

 黄泉川はグゥラーの“治安崩壊事件”の被害者であり、入院していても疑問はない。

 しかし、こうして黄泉川は警備員としての日常に復帰している。

 本当に大したものだ。

番外個体「でもさぁ、時既に遅しって言葉もあるじゃん? マジでぶっ倒れたらミサカたちも迷惑だし」

打ち止め「番外個体は“無理しないでね”って言ってるみたい、ってミサカはミサカは通訳してみたり」

芳川桔梗「アナタも優しいわね、番外個体」

 家族談義が行われる中、一方通行の様子に気付いた黄泉川が問い掛けた。

黄泉川愛穂「どうした? 何かあったじゃんか?」

一方通行「……何でもねェよ。オイ、番外個体。ブラックコーヒー」

番外個体「えー……、ミサカ使いが荒くなーい?」

一方通行「ここでバイトしてンだろォが。仕事しろ仕事」

 一方通行がいつもと違う。

 雰囲気だけで、黄泉川はそこまで把握してしまう。

 たくさんの子供を救ってきて、同じように救えない子供もたくさんいて。

 そして今は保護者として、目の前の子供に手を伸ばす。

黄泉川愛穂「一方通行」

一方通行「何だ」

黄泉川愛穂「あたしらを拘束してた男。グゥラーって奴は、トリックスターって呼ばれてるらしいじゃんか」

一方通行「………それがどォした…」

黄泉川愛穂「残り何人と戦う気か知らないけど、奴を間近で見た限り、相当狂ってる連中じゃん」

一方通行「ンなモン、とっくに知ってるっつーの。何が言いてェンだ」

黄泉川愛穂「仲間を切り捨てるなよ」

 その言葉に、内心少しだけドキリとした。

 花一の顔が浮かんだことも事実だ。

黄泉川愛穂「お前のことだ。巻き込みたくないからって一人で行動することもあるかもしれない。でも、それを理由に仲間外れにするのは止めておいた方がいい」

一方通行「知った風な口利きやがって」
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