とある学園の死闘遊戯 罪

□第04話   
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 改造人間。

 メイドの体は、アセディの手によって機械化されていた。

 おそらく、彼女以外の事件被害者も同じように機械化されてきたのだろう。

 そして今現在、もう彼女しか残っていない。

メイドA「皆、私を残して壊れてしまいました。私の寿命も、きっと残り僅かでしょう」

花一籠目「………どうして改造なんか…」

メイドA「分かりません。ですが、知ろうとも思いません。そういう風に出来ているのです」

 機械的な動作をする人だとは思っていたが、まさか機械化した体だったとは。

 この時、アセディがモゾモゾと動き出した。

アセディ「ぁ……ふぁあぁ〜……」

メイドA「おはようございます、アセディ様」

花一籠目「…………」

 駆け寄るメイドの姿には、一切の恐れも迷いもなかった。

 彼女は本当に自分の意思で動いている。

 他の誰でもない、アセディのために尽くしている。

アセディ「あ〜……、スマンが少し席を外しておくれ」

メイドA「かしこまりました」

 電動車椅子の後ろに回り込んだメイドは、車椅子の影に隠れる形で身を屈める。

 そして、何処かへと消えてしまった。

アセディ「さて、聞いたかのぉ?」

花一籠目「……おじさんの過去についてですか?」

 アセディは静かに頷いた。

花一籠目「メイドさんから、大体のことは」

アセディ「そうか……」

 少しだけ沈黙する。

 それを破ったのは花一だった。

花一籠目「誘拐してないし殺してない。メイドさんは言っていましたが、本当のところはどうなんですか……?」

アセディ「……ワシにも、もう分からん。だが、言われたことが真実だろう」

花一籠目「おじさん自身のことですよ? まるで、他人事みたい……」

アセディ「ワシは“アセディア”じゃ。怠惰である故、関心が人の何倍も薄いんじゃよ」

 電動車椅子を操作して、花一と並ぶ形で向きを揃える。

アセディ「ワシは誘拐していない。ただ勝手に周りの者たちがワシに集まってきただけ。ワシは殺していない。ただ皆の願いを叶えただけなのじゃ」

花一籠目「皆の願い?」

アセディ「ワシに集まってきた者は皆、もう帰ることはなかったはずじゃ。何故なら皆が皆“帰りたくない”と口にしたからじゃ」

花一籠目「………だから、体を改造してその人自身を奪ったんですか…?」

アセディ「…………」

 アセディは何も言い返さなかった。

 アセディが誘拐事件の犯人だということは誤解なのかもしれない。

 しかし、集まってきた者たちを改造し、その人自身を奪っていったのは事実。

 通行人Aを通行人A´に変えてしまえば、通行人Aは何処にもいなくなる。

 例え同一人物であろうと、通行人Aはアセディの手によって殺されたのだ。

花一籠目「後悔してることって、そのことなんですか?」

アセディ「……さぁな」

花一籠目「それも、よく分からないんですか?」

アセディ「……そうだな」

花一籠目「…………」

アセディ「…………」

 アセディは何かを考えている素振りを見せる。

 何を考えているのか尋ねようとした矢先、アセディが口を開いた。

アセディ「ワシは、何かを後悔してる。それは確かじゃ。だが何を後悔しているのかが分からん」

 何人も改造したこと?

 何人もの命を奪ったこと?

 すぐに自首しなかったこと?

 メイドたちに逃亡を手助けしたこと?

 全世界級の指名手配犯になってまで逃げ続けてしまったこと?

アセディ「トリックスターになったことも、後悔の一つかもしれんのぉ。何かが変わるわけでもなかった」

花一籠目「………トリックスターの使命」

アセディ「む?」

 花一は、アヴァリの事件が終わってから白井たちが口にしていたことを思い出す。

 トリックスターには、与えられた使命と一員になる際に言い寄られた誘い文句があることを。

花一籠目「アセディさんは、どんな使命を受けたんですか?」

アセディ「…………」

 アセディは、花一に答えた。
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