とある学園の死闘遊戯 罪
□第04話 共闘
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第十三学区。
土御門は、結標から第十五学区で入手した情報を伝えられた。
通話が終わった時、彼の表情は苦いものだっただろう。
土御門元春「第五位の削板軍覇がやられたらしい」
上条当麻「ーーーッ……、そうか……」
そして、それは上条も同じだった。
土御門元春「俺たちも第十五学区へ行ってみるか? 削板の戦場から、何か分かるかもしれないぜよ」
上条当麻「あぁ、そうd」
スヴィル「いやいやいや、それじゃ困っちゃうんだよなぁ」
突然割り込んできた声。
そして“自分そっくりの声”に、上条は耳にしただけで嫌な気持ちになる。
近くにいた黄泉川が、真っ先にその存在に気付いた。
黄泉川愛穂「あそこだ! あのコンテナの上にいるじゃんよ!」
休校中の小学校の校庭。
その隅に積み上げられたコンテナの上で、スヴィル=ペァゴーマが胡坐をかいていた。
スヴィル「残念だけど、こっちの都合上はここにいてもらわなきゃ困るんだよなぁ」
上条当麻「テメェ、何言ってやがる!」
スヴィル「ただのお願いさ。ここから動かないでくれ、っていうね」
土御門元春「ほぉ、つまり第十五学区に行かれればトリックスターにとってマズい事態が起きるって訳か? そんでもって、俺たちが貴様らの頼みを聞くとでも思っているのか?」
スヴィル「ん? いやいや違いますよ、土御門」
上条の声で呼び捨てにされ、少しだけ戸惑ってしまう。
赤毛に黄色い瞳孔を持つ上条は、スヴィルのものだというのに。
スヴィル「第十五学区に利益はないさ。問題は、アンタたちが“第十三学区にいること”なんだよ。そして、そのお願いを聞かなかった場合、損をするのは俺たちじゃない」
黄泉川愛穂「……どういう意味じゃんか?」
スッと立ち上がったスヴィルは、ポケットに手を入れて何気なく口にする。
スヴィル「マズい事態が起きるのはアンタたちの方、ってだけさ。だから命令じゃなくてお願いにしたんだよ。俺たち側からしてみれば、どっちでもいいことだからさ」
第十五学区に意味はない。
しかし、上条たちには第十三学区にいてもらわなければならない意味がある。
これは、スヴィルの“命令”ではなく“お願い”に過ぎない。
何故ならば、上条たちが第十三学区を離れることで、損をするのは上条たちだからだという。
上条当麻(どういうことなんだ……。スヴィルの言ってることは、本当に正しいのか……?)
上条が考えている間に、次の展開が始まっていた。
空波陸「空気鉄砲(エアガン)ッ!!」
バァンッという並みの発砲音が響いた。
スヴィルの身体が、ぐらりと真横に倒れ込む。
黄泉川愛穂「ーーーッ!?」
土御門元春「そ、空波っ!?」
右手の親指をトリガーのように構え、人差し指をスヴィルへと向けて立ち尽くす空波がいた。
人差し指の先からは、硝煙のようなものが昇っている。
空波陸「アタシの正乱波動(ロジカルウェーブ)は波を操る力。この指からスヴィルまでの延長線上の空気を一点集中させて衝撃波を作り出す、って実際は銃弾みたいなエフェクトだったりしちゃったり」
コンテナによじ登り、気を失ったスヴィルを前にする。
空波陸「所詮は人の子。何者か知らないけど、不意打ちの攻撃には敵わなかったみたいね、って正直卑怯な手は得意じゃないんだけどさ」
さすがは生粋の風紀委員トップ。
目的のためには手段は選ばないと聞いていたが、ここまでインパクトのある展開は想像していなかった。
上条当麻「……た、倒しちまった、のか…?」
土御門元春「いや、良くても気絶程度だろう。だがこれは超展開の大チャンスだ!」
スヴィル「本当だな。マジでそうだったら、アンタたちも嬉しかっただろうに」
スヴィルの声が聞こえた。
それも、上条たちの“背後”から。
空波陸「………あれ…?」
コンテナに立つ空波の横で横たわる“何か”が、もぞりと動き始めた。