とある学園の死闘遊戯 罪
□第07話 処刑
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体中が痛む感覚。
手足の自由が利かない不快感。
上条当麻が意識を取り戻した時、真っ先に浮かんだ感情がその二つだった。
上条当麻「………ここ、は…?」
削板軍覇「起きたか……。無事に目覚めるとは大した根性だ……」
声が聞こえた方へと視線を向ける。
そこには、まるでキリストのように十字架に縛られた削板軍覇がいた。
上条当麻「……その格好、は……?」
削板軍覇「言っておくが俺の趣味じゃねぇぞ。それに、格好だけならお前も同じだ」
指摘されて、手足の自由が利かない理由を知る。
上条も削板と同じように、十字架で拘束されていた。
上条当麻「………痛っつー…。俺、殴られたんだっけ……?」
御坂美琴「『…みたいね。頭から血、出てるわよ………』」
独特なくぐもった声が聞こえ、上条が辺りを見回す。
よく見れば、まだ見知った顔が三つ揃っていた。
上条当麻「……御坂、垣根さん……。それに……食蜂も……」
垣根帝督「………よお…最悪な再会で悪いな、上条……」
上条たちと同じように十字架で拘束されている面々。
中でも、垣根の傷は一番目を引き付けた。
赤ではなく既にドス黒い血で衣服を染め、顔色も一方通行以上に白く見えた。
上条当麻「垣根さん……。その傷……」
垣根帝督「いつもなら、問題ねえ、って言えんだけど……。今回は、マジでヤバいな……」
御坂美琴「『演算能力が低下してるけど、それが幸いしたのよ……。食蜂さんの能力を、受け入れられるところまで衰弱してるおかげで、心理掌握で未元物質の力を、底上げしてる……』」
食蜂操祈「私の浸透力……、結構スゴいでしょ☆……」
顔色こそ優れないが、病院にいた頃より落ち着いているらしい食蜂。
しかし、現状に不安を抱かずにいられないのは皆同じだ。
上条当麻「ところで、ここは……? 真っ暗で何も見えないが……」
スヴィル「なら明るくしてやるよ。ライトオン!」
突然聞こえてきた大声に反応する間もなく、パッと明かりが点灯する。
眩しさに目を瞑る上条たちが次に目を開けた時、そこには水源が広がっていた。
第二十一学区の貯水ダム。
ここは巨大な貯水ダムの真上らしく、真下にはゴウゴウと学園都市中に水が流れている。
十字架が倒れれば、即濁流に呑まれて溺死するだろう。
並べられた十字架の眼前、上条たちと向い合せに並ぶように、スヴィルが宙に浮いて笑っていた。
スヴィル「さっき振りだな、上条当麻」
上条当麻「スヴィル……ッ」
もはやスヴィルが浮遊してることに疑問は持たない。
一方通行から聞いていた通り、スヴィルは“何でも有り”なのだ。
上条当麻「何を考えてやがる……。何をするつもりだ!」
スヴィル「そう慌てるなって。まだお客人が二人揃ってないんだ」
二人の客人。
それは誰なのかと考える間もなく、その二人が連れてこられた。
スヴィル「はい。これで全員集合だな」
一人は、トリックスターのイーラァ。
体中に上条との戦いの傷が見えているが、本人にはまるで効いていない。
そしてもう一人、上条たちと同じような十字架で縛られた少年が、イーラァによって運び込まれてきた。
その少年を見た時、誰もが驚愕し、上条が叫び放つ。
上条当麻「一方通行ぁッ!!!!」
声に応えるように、一方通行が口を開く。
一方通行「よォ、上条……。数時間振りだが、随分と久しぶりに感じるなァ……」