とある銃器の天界戦争

□第00話 標的
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 “死の国”として知られる、あの世の世界。

 天国や地獄、冥界や霊界など名称も様々。

 黄泉の国とも呼ばれるかもしれない。



 そんな世界の内の一つ、分類するならば“天界”に近い世界にて事件が起こっていた。

????『逃走した死者は何人です?』

 ボイスチェンジャーを使った、機械的な声が無線機から聞こえる。

 その無線機を持っているのは、髭の似合う中年の男性だ。

 190センチを超える長身と、背中まで伸びた茶髪が特徴的で、溜息が多く気怠げな雰囲気があった。

????「おそらく、四人ぐれぇかと……。すんません。まだぁ、捕まえてもいねぇんです」

????『構いませんよ、天使長さん。私がお聞きしたい事柄は別にあります。何を指しているかお分かりで?』

天使長「………まぁ…、何となく……」

 天使長と呼ばれた中年男性は溜息を吐く。

 無線機からの機会声は淡々と告げた。

????『私の統べる天界に、生きた人間が直接訪れる事件は何度もありました。しかし、今回のような“天界に昇った死者を連れて行かれる”ケースは前代未聞です』

天使長「……ご尤もです…」

????『早急に、連れ出された死者たちの保護を急いでください。そして、死者を連れ出した生者は始末していただきましょうか』

 その言葉に、天使長は首を傾げる。

天使長「殺しちまうんですか? 大天使様も心を鬼にする時があるんですね……」

 大天使と呼ばれた機会声の主は、再び淡々と答えた。

大天使『黄泉の世界の秩序を乱したのです。死者を取り戻そうとする生者の気持ちは分かりますが、天界には天界の秩序があります。生者が乱していい道理はありません』

天使長「……ご尤もで…」

 ポリポリと頬を掻く天使長。

 納得したのか、していないのか、よく分からない表情だ。

大天使『標的は、分かっているのですか?』

天使長「……まぁ…ね…」

 無線機を片手に持ちながら、天使長は懐のリストを読み上げる。

天使長「連れ出された死者は四名。結標淡希・滝壺理后・浜面仕上・絹旗最愛。どの子も同日に死亡しているところから、連れ出した生者の関係者だろうな……」

 そして、最後のページを読み上げた。



天使長「標的は、一方通行。天界から死者を連れ出した罪っつーことで、殺しちまっていいんでしたっけ?」



大天使『仮にも、貴方は“天使長”です。それくらいの判断はお任せいたします』

天使長「はぁ〜…………。面倒だな……」

 無線機の通信を切り、あくびを出す。

 思いっきり面倒臭そうに、天使長は首を鳴らして呟いた。

天使長「あんまし好きじゃないんだけどなぁ……。狩りってヤツは……」







 日本国の東京都に存在する学園都市。

 統括理事長を務めている少年・一方通行は、とある事件によって失ってしまった仲間を取り戻すため旅に出た。

 生きたまま天界に昇る荒業で、死者たちの魂を取り返すことに成功したものの、天界の逆鱗に触れてしまった。

 生者の都合で死者を呼び戻すことは禁じられており、あの世の理を乱す意味を持っている。

 天界からの追手と、死者(仲間)たちの完全な蘇生。

 生者と死者の戦いと共に、物語は始まっていく。







 ちなみに、現在。

 一方通行は、何故か能力を使えない……。



  【第01話につづく……】

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