とある銃器の天界戦争
□第03話 山脈
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天界の神殿内。
手作り感溢れるボロボロハンモックに寝そべる天使長は、とある報告書に目を通していた。
天使長「大図書館の地下室にて、監禁されていた人々を救助したことは良いんだが……。これって、君たちが見つけたのか?」
喜界島美鳥「………………」
報告書の提出に来ていた美鳥は何も語らない。
その者たちを見つけたのは一方通行たちであり、救助したのが自分たちだったという話だからだ。
天使長「ふぅ……、まぁいいや。とりあえず、犯人の目星とかは?」
喜界島美鳥「…現在、身代金目当てと思われる盗賊一味を桃香に追わせています…」
天使長「そっか。なら安心だな」
報告書を片付け、再び昼寝を始めようとする天使長だったが、ふと美鳥へと視線を移した。
天使長「それで? 理由を聞かせてもらおうか?」
喜界島美鳥「………………」
天使長「何で、桃香ちゃんに魂銃(エンジェルピース)の解放を許可したんだ? そんなに手強い相手だったのか?」
大図書館内の戦闘において、美鳥は桃香に魂銃解放を許可した。
それはつまり、天使兵として所有している力を人間に向けて使ったことになる。
天使同士の戦いや、人間以外の異形な生命体との戦いではなく、ただの人間相手に使ってしまったのだ。
喜界島美鳥「…一方通行の戦闘能力が私たち天使と対等に思えました。よって、魂銃解放を許可いたしました…」
天使長「……そっか。でも、覚悟してくれよ。俺がヤツらの始末と確保を命じたのは君らが適任だと思ったからだ」
天使長「“中級天使兵”の桃香が解放しちまったんだ。噂を聞きつけた“他の連中”が“加勢する”なんて名目で乱入してきても責任持てねぇからな」
一方通行たちを追う任務に、他の天使兵が絡んでくるかもしれない。
桃香が解放しなければならない敵戦力と判断されてしまえば、手柄の横取りも考えられる。
そうなる前に、何としてでも任務を遂行しなければ。
喜界島美鳥「…回収目標であった者たちなのですが、彼らは…」
天使長「あぁ〜……、もういいかな。こっちの秩序を乱す気なら“回収”じゃなくて、一方通行と同じように“抹殺”でもさ。上には俺から言っとくよ」
喜界島美鳥「………失礼します…」
美鳥は再び下界へと向かい、天使長だけが残された。
大天使の声は聞こえないが、どうせ会話の内容は盗み聞きしているのだろう。
それでも何も言わないのは、大天使の言いたいことを既に天使長が理解しているからだ。
何かあれば、天使長が責任を取らなければならないこと、を。
天使長「…………」
天使長は、ハンモックの下から銃器を取り出す。
黒光りする大きな銃器は、天使長の魂銃(エンジェルピース)なのだった。
天使長「……あんまし、使いたかねぇんだけどなぁ……」
王街と大図書館の中心。
美鳥と桃香は拘束した盗賊一味を地元の警察部隊に引き渡していた。
白河桃香「そっか〜。天使長様が……」
喜界島美鳥「…早く任務を終わらせなければ、他の天使兵に邪魔をされるわ…」
美鳥たちは、一方通行たちが向かった先を見据える。
今のところは王街に戻ったのだろう。
白河桃香「でもでも。一度やったんだから、もうさっさと解放して捕まえちゃお!」
喜界島美鳥「………そうね…」
片手に持つ拳銃を握り、美鳥たちは動き始めた。