とある銃器の天界戦争

□第05話 天界
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 滝壺は考える。

 先ほどまで、自分たちは確かにカラ砂漠にいた。

 だが、今のこの場所は間違いなく天界。

 更に言えば、周りの皆は“この状況にまるで気付いていない”かのように振る舞っているのだ。

滝壺理后「は、はまづら……。ここ、天界じゃ……」

浜面仕上「えぁ? 滝壺、何か言ったか? つーか、ここにいると危ねぇかもな……。退却するか?」

 一方通行と音々の戦いの方が気になるらしく、浜面は滝壺を視界に入れつつ話しをする。

 やはり、この状況の変化に気付いていないようだ。





喜界島美鳥「…見つけた…」





 滝壺の背後から、聞き慣れた少女の声が聞こえた。

浜面仕上「ーーーッ!! 滝壺ッ!!」

 咄嗟に浜面が滝壺を引き寄せる。

 滝壺の背後から拳銃の弾丸が放たれ、ギリギリのところで滝壺の頭上を通り抜けた。

 もちろん、浜面も無事である。

喜界島美鳥「…外した…」

浜面仕上「あ、あっぶねぇ……!」

滝壺理后「は、はまづら! 大丈夫……!?」

 お互いに怪我がないことを確認し、美鳥へと向き直る。

 拳銃を向けたまま、ケラケラと笑っている桃香を傍らに、美鳥は真っ直ぐに浜面たちへと歩み寄る。

 しかし、その二組の間に割って入る二つの影があった。

一方通行「オイ、人様が修行してる間に何してくれてンだ? あァ?」

天門寺音々「隙を見て弱き者から始末する、か……。同じ天使として情けなく思うぞ」

 言わずもがな、一方通行たちだった。

白河桃香「あれあれ!? 音々ちゃんだ! そっかぁ〜、封印から解放されちゃったんだねぇ〜」

喜界島美鳥「…優秀な後輩との再会は後回し。邪魔するなら、容赦しない…」

天門寺音々「言ってくれるな……、中級風情が」

一方通行「…………」

 音々の言葉に、一方通行は反応する。

 桃香の方は知っていたが、どうやら美鳥も桃香と同じ中級天使兵らしい。

 どちらも同じならば、相手をするべきは目の前の怨敵。

一方通行「オイ、悪りィがそっちのチビガキを任せるぜ」

天門寺音々「ほぉ、我は構わぬが貴様は勝てるのか? 白河は我よりも天使兵の経験が高い大ベテランだ。一筋縄ではいかんぞ?」

一方通行「そンなモン、とっくに理解してるっつゥの。だからこそ思い知らせてやるだけだ」





一方通行「このクソ短ェ間に手に入れた、天界戦争の本当の力ってヤツをよォ」





 その言葉には、音々自身も少なからず驚愕した。

天門寺音々「あの短時間で既に体得したのか……。間近で見れぬのが悔しいぞ」

一方通行「言ってろ。あとで飽きるほど拝ませてやる」

 一方通行は浜面たちへと視線を向ける。

 その視線に気付いた浜面が、滝壺の手を取って走り出した。

滝壺理后「はまづら? 何処に……」

浜面仕上「心配すんな、遠くへは行かねぇ。ただ、あの場に居続けるのは危険だからな……」

 一方通行と白河桃香。

 天門寺音々と喜界島美鳥。

 両者の戦いを、少しだけ遠くへと移動した浜面が、滝壺と共に振り返り見守る。

浜面仕上「散々追いかけっこを続けたんだ。もうそろそろ、この遊びも終わりにしようぜ」







 天界。

 一方通行たちのいる場所へと、真っ直ぐに向かっている影が二つあった。

????「ヒャッハハ!! ついに現れやがったかァ! 脱走者アーンド一方通行ァ!!」

????「あまり叫ばないでくれ……。ただでさえ走りながら話しているんだ。頭に響くし疲れちまう……」

 真っ黒なジーンズに上半身裸の華奢な体格。

 長い白髪をなびかせながら狂気的に笑っている男。

 質素なズボンに白いワイシャツの高校生にしか見えない容姿。

 短い銀髪に気だるげな顔付きの男。

 二人はその手に魂銃を握りながら、真っ直ぐに一方通行たちのいる場所へと向かっている。
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