とある銃器の天界戦争
□第06話 世界
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一方通行は、学園都市の統括理事長に昇格した。
過程も含めて、しっかりと覚えている。
一方通行は自分が殺したはずの木原を見て、浜面たちを生き返らせる方法があると思った。
そのために、上条に全てを話して学園都市を出た。
ここまでは確実に覚えている。
だが、その先の出来事が曖昧だった。
一方通行は、生者のまま確かに天界へ昇った。
一方通行は、天界で確かに浜面たちを見つけた。
一方通行は、天使兵たちから逃げながら確かに下界へと降り立った。
一方通行は、これらの出来事もしっかりと覚えている。
だが、具体的な過程が“何一つ”思い出せない。
どうやって浜面たちのいる場所を知った?
どうやって天界へ昇る方法を見つけた?
どうやって生きたまま天界に昇れた?
どうやって浜面たちと再会できた?
どうやって天使兵から逃げてきた?
どうやって下界へと降り立った?
そして、どうやって再び天界へと昇った?
何故、再び天界へ昇る必要があった?
それらの過程を、一方通行は木原に指摘されるまで不思議だと気付かなかった。
確かに結果や過去、思い出としての記憶がある。
だと言うのに、そこに至るまでの過程が欠落している事実に、今の今まで不思議に思わなかったのだ。
目の前に立つ木原に向かって、一方通行は尋ねざるを得ない。
一方通行「俺たちが、ボードゲームの駒? この世界が、作りものだと……?」
木原数多「まだ信じらんねぇか。だが、テメェ自身の記憶がおかしいのは事実だ。じっくり考えてテメェで理解しろ」
会話を続けていた二人だが、木原の背後から不意に声が聞こえた。
滝壺理后「………これが、私たちを登場キャラクターとしたゲームなら…」
その声は小さいものだったが、確かに皆へと聞こえていた。
滝壺理后「物事の展開が、旨過ぎると思ってた……。ここに来る前はカラ砂漠だったのも、夢じゃなかったよね……」
浜面仕上「滝壺……? お前、何を言ってr」
木原数多「へぇ〜、この現状に少なからずの違和感を持ったヤツがいたんだなぁ。大したもんだ」
浜面仕上「お、おい。何の話をしてんだよ。確かにカラ砂漠には行ったけど、あれはもう随分前のことじゃねぇか」
木原数多「じゃあ聞くけどよ。その後はどんな冒険をしちゃったわけ?」
浜面仕上「どんなって……。南の島に渡ったり、天界の情報を得るために雲の上の世界まで行ったり、凍えるほど寒い氷の国に行ったり……」
浜面は、当たり前のように滝壺の知らない出来事を語りだす。
唖然とする滝壺だが、浜面の説明を聞いていた一方通行も当たり前のような顔をして聞いている。
彼らの記憶には、滝壺と共に冒険してきた記憶があるのだろう。
木原数多「あーあーあーあー、もういいもういい。なら質問を変えるけどよぉ。その冒険の時に、具体的な思い出とか出来事とか、全部思い出せるか?」
浜面仕上「はぁ? 何言ってんだ。当たり…前……だ、ろ?」
浜面の言葉が、少しずつ弱くなっていった。
最終的には、一方通行まで表情を変えている。
問うまでもなく、彼らは“詳しい過程”を思い出せていない。
浜面仕上「え、あ……? な、何で……」
木原数多「ほーれ見ろ。そんなことだろうと思ったぜ」
改めて一方通行に向き直った木原は、少しの真剣味を含んだ声色で言い出した。
木原数多「場所を変えるぜ。異論はねぇよな?」