とある狭間の平行世界

□第01話 第二学区A
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 上条当麻は混乱していた。

 確か自分は、学園都市の第十九学区にいたはずで。

 一方通行と浜面の二人が一緒にいたはずで。

 突然、地震に襲われたはずで。

 気が付けば、身の回りは緑溢れる大自然なわけで。

上条当麻「……え〜っと、これは一体、どういうことなのでせうか……?」

 明らかに学園都市ではない。

 こんな場所に覚えのない上条は、またいつもの不幸な事件に巻き込まれたのだと結論付けてはいたが。

 場所が分からないことには不安を隠せない。

上条当麻「……何処をどう行けば何処に出るんだぁ…? はぁ…、不幸だ……」

 草花を踏みしめて前へ進む。

 立ち止まっていては進展しない。

 そう思った矢先、目の前の茂みがザワザワと音を立てた。

上条当麻「ーーーッ!!? だ、誰だッ!?」

 その声に驚いて答えるように、茂みから主が顔を出す。

上条当麻「………て、あれ…?」

白井黒子「……あら」

 見覚えのある顔、というより知り合いだ。

上条当麻「……白井? 白井だよなぁ!? 良かったぁ〜! 知ってる顔に会えたぜ。でも、何でお前がここに?」

白井黒子「……はぁ〜、それはわたくしの台詞ですわ。何故、貴方がここにいらっしゃいますの?」

 逆に質問されてしまった。

上条当麻「…いや、何故って言われましても………というか、ここは何処なのか知ってんのか?」

白井黒子「……大丈夫ですの? 何か悪いものでも捕食なさったのでは?」

上条当麻「何その言われ様ッ!?」

白井黒子「ここが何処なのかは、周りの風景でも見て判断できるのではありませんこと?」

 上条は言われるがままに周りを見渡すが、見たことのない自然な風景があるだけだ。

 ここに来た覚えは(記憶喪失だが)ないし、有名な場所でもなさそうだ。

 しかし、目の前の白井の反応からして、上条が知っていてもおかしくない場所のようだ。

上条当麻「えーっと、申し訳ない。上条さんはド忘れをしておいでのようで……」

白井黒子「ご自分の学区以外の場所は眼中にないとでも? これだから第三学区の殿方は」

上条当麻「ん? 第三学区?」

 その言葉は、少なくとも学園都市を意味している。

 しかし、学園都市の第三学区にこんな場所はなかったはずだ。

上条当麻「なぁ? ここは第三学区なのか?」

白井黒子「そんなわけありませんわ! ここをどのように見たら第三学区に映りますの!?」

 ですよねー、という顔をしてみせる上条。

 何もそこまで怒鳴らなくてもいいのに、と思った上条だが、その表情も直ぐに変わることになる。





白井黒子「見ての通り、ここは“第二学区”ですの。お早目にご自分の学区にお戻りなさいな。貴方のような“第三学区の殿方”と話すのは時間の無駄ですのよ」





上条当麻「………はい…?」

 豆鉄砲を食らう、とは今の上条の表情に酷似する。

 見ての通りの第二学区?

 記憶が正しければ、この場には第二学区の面影などない。

 第三学区の殿方?

 上条の住居は第七学区であり、第三学区に引っ越した覚えはない。

上条当麻(どういうことだ……。学園都市そのものが、何か不可思議な魔術に捕らわれちまったのか……?)

白井黒子「……どうなさいました?」

上条当麻「……えぁ?」

白井黒子「何やら思い詰めたような顔をなさっていますが……」

上条当麻「………いや…、あのさ」

白井黒子「何ですの?」

上条当麻「第七学区って、どんな場所だったっけ?」

 今度は白井が、豆鉄砲を食らった顔をする。

 それほどおかしなこと言ったつもりはないのだが。

白井黒子「……申し訳ありません。これ以上、貴方の戯言に付き合ってられるほど暇ではありませんの」

 そう言った白井は、クルリと背を向けて歩き去ろうとする。

上条当麻「ち、ちょっと待っt」

 呼び止めようと手を伸ばす上条だが、顔だけ振り返った白井の表情にビクついて手を引っ込める。

 正確には、彼女の目付きに本能的な怯えを覚えた。

白井黒子「…………ッ」

 キッと睨む白井の目は、もう何も言ってくれるな、と怒りを見せていた。



 明らかに“人間ではない目付き”で……。
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