とある狭間の平行世界

□第03話 第四学区A
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 浜面仕上は混乱していた。

 確か自分は、学園都市の第十九学区にいたはずで。

 上条と一方通行の二人が一緒にいたはずで。

 突然、地震に襲われたはずで。

 気が付けば辺り一面、枯れた草木や崩れた建物が目立つ風景なわけで。

浜面仕上「……こ、ここ…は……グフッ!! な、何だ…? 息が…苦し、い……ッ」

 明らかに学園都市ではない。

 胸が締めつけられるような重苦しい空気が広がり、浜面の呼吸を阻害する。

浜面仕上(こんな場所、学園都市にあったか……!? いや、何かヤバい実験してる区域に入り込んでるんじゃ……ッ)

 枯れた草や腐った木々、ボロボロに崩れて廃墟と化した建物。

 どう見ても環境の良い場所とは言えない。

浜面仕上(これは本能で分かるッ。ここにいたら、間違いなく死ぬ!)

 とにかく走れ。

 本能が命じるままに、浜面は一目散にその場所を離れた。







浜面仕上「……ど、どうなってんだよ…、一体……ッ」

 だが、現実は甘くはない。

 走れど走れど、この胸の苦しみは治まることなく浜面を苦しめる。

 出口のない迷路に迷い込んでいる気分だ。

浜面仕上(ふざけんな……ッ。こんな意味の分からねぇ死に方があるか…よ………ッ)

 ドサッ、と浜面の意識がここで途絶える。

 その背後より、足音が近付いてきていたことにも気付かずに……。







 目を覚ます前に、浜面の鼻をくすぐる香りがあった。

 まるで花のように心が安らぐ、自然に溜息が零れるような良い香り。

浜面仕上(……何だぁ…これ…。懐かしいような……)

 この香りを嗅ぐと、愛おしい彼女のことを思い出す。

 そうだ、ここが本当に学園都市の内部ならば、彼女がいてもおかしくはない。

浜面仕上(……もしかして、助けてくれたのか…? 滝t…)

 目を開けた浜面の目に飛び込んできたのは。





 目を閉じて、キス体勢で唇を近付けてくる絹旗最愛の顔だった。

浜面仕上「どわああああッ!!!??」

絹旗最愛「わきゃああ!! チックショォ、超起きやがりました!!」

 続けて、浜面が寝かされていた部屋の扉を、バァァンッ! と勢いよく開けて入室してくる者が一人。

麦野沈利「こらぁあ、絹旗ぁッ!! テメェ抜け駆けしてんじゃねぇぞ、ゴルァッ!!」

浜面仕上「ここでまさかの麦野ッ!!? いや、待って待って、マジで待ってくれ!! 状況がまるで分からない!! ていうかテメェらキャラ変わり過ぎだッ!!」





 だが二人は、浜面の言葉に対して当然のように返答する。

絹旗最愛「超何言ってんですか! 状況が超理解できないのは、こっちだって同じですよ!」

麦野沈利「まったく…。普段から使えない馬鹿だと思ってたら、本当に馬鹿に成り下がるとはねぇ…」

浜面仕上「…ひでぇ言われ様だなぁ、おい…」

 力なく呟いた浜面だったが、絹旗が続けた言葉は無視できるものではなかった。

絹旗最愛「この“第四学区”での生き方を超忘れやがりましたか? そんなんじゃ明日にでも命日迎えますよ」

浜面仕上「………は…? 第四学区……?」

麦野沈利「何よ、今更」

 言い方からして、ここが学園都市であることは間違いないようだ。

 しかし、第四学区?

 浜面は第十九学にいたはずだ。

 運ばれてきた可能性を差し引いても、浜面が記憶する限りの第四学区には、あれほど危ない場所はなかったはずだ。

浜面仕上「……ここは、第四学区……」

絹旗最愛「超そうですよ」

浜面仕上「俺は、第十九学区で……」

麦野沈利「は? 十九? どこにそんな学区があるって言うんだい」

浜面仕上「…………」

 どういうことだ?
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