とある狭間の平行世界

□第04話 第一学区A
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 別世界の学園都市・第一学区。

 巨大ショッピングモールや遊園地などのレジャー施設で溢れ返っている、学園都市最大面積を誇る学区。

 中央には“窓のないビル”が建っており、西南北の方角には第二学区から第四学区までの三つの学区が広がっている。

 そして今現在、上条の前には目を疑う光景が広がっている。

上条当麻「……え…?」

上条当麻「……はい?」

 上条当麻が、二人いた。

一方通行「オイオイ、面倒くせェこと起こしてンじゃねェよ」

上条当麻「あ、一方通行ッ!」

上条当麻「え、一方通行ッ!?」

 それぞれ別の反応を見せる上条。

 一人は歓喜、もう一人は驚愕だった。

上条当麻「良かったぁ! 俺一人きりだったらどうしようかと!! お前も一緒に飛ばされてきたんだなぁ!」

上条当麻「何だよ、珍しいじゃねぇか! しかも第一学区で出会うとは。いつ外に出てきてたんだ?」

一方通行「……とりあえず、前者が俺の知る上条だってことは理解した」

 一方通行は、二人の上条の首根っこを掴んで移動する。

 少し先にある、周りの死角になる建物の影へと入っていった。

一方通行「さて、偽上条」

上条当麻?「に、偽!?」

一方通行「ここは一体、どォいう場所だ? テメェらは一体、どォいう存在としてここにいやがる?」

上条当麻「ち、ちょっと待てって、一方通行。そんな風に尋問しなくたって」

 一方通行の頭も混乱しそうだった。

 まったく同じ顔、まったく同じ声、まったく同じ仕草。

 文字通り、見分ける要素が一つもない二人の上条が前と隣に存在しているのだ。

 常人なら軽いトラウマになってもいいほどの現実である。

 更に現実は、一方通行を苦しめる形で降りかかる。

浜面仕上「あ、あーーッ!! 大将! 第一位! 良かったぁ〜、やっと会えたぜ!」

浜面仕上「あん? 大将じゃん? ってか、何故に二人!!? あ、一方通行だ。久しぶり」

一方通行「………………勘弁、してくれ……」

 顔を出した二人の浜面の周りには、一方通行が知るところのアイテムの面々もいたのだが、完全に眼中に入らなかった。

 上条二人、浜面二人。

 ある種の地獄絵図に囲まれた一方通行は、ついに項垂れてしまった。







 一方通行の提案で、一方通行の知る上条と浜面を“A”とし、こっちの別世界学園都市に住まう上条と浜面を“B”として呼ぶことになった。

 上条Bと浜面Bは、こっち側の住人であるのに“B”と呼ばれるのに不満を呟いていたが全力で無視した。

 いちいち付き合っていたら身と頭が持たない。

一方通行「だが浜面Aが浜面Bと世界事情の話を進めてることは助かった。大まかにだが、この世界を知ることも出来たンだからなァ」

 浜面AとBがお互いのことを話し合っていたことで、A側の上条たちがどういった経緯で別世界の学園都市に来てしまったのかを説明する手間が省けた。

 上条Bは信じられないという顔をしていたが、現に上条Aと一方通行と浜面Aが来てしまっていることは事実のため、受け入れる他に道はない。

上条当麻A「そういえば、第一学区に来る前は第二学区にいたんだけど。そん時に会った白井にすごい剣幕で睨まれたっけなぁ」

上条当麻B「え? 白井に会ったのか? あちゃ〜、後々がめんどくさそうだなぁ……」

上条当麻A「こっちの俺は、白井に何したんだよ?」

上条当麻B「何もしてない。ただ元から仲が悪いだけだ」

 上条Aは第二学区で上条当麻が嫌われ者のような扱いを受けていたことを思い出す。

 もしかしたら、上条の言う“仲が悪い”というのは、広範囲に渡っているのではないだろうか。

浜面仕上B「あー、そういう捉え方も間違っちゃいないが、少し違うんだよなぁ」

浜面仕上A「それ、どういう意味だ?」

浜面仕上B「直ぐに分かるさ」

 浜面Bがそう言った瞬間、第一学区の中央である“窓のないビル”からサイレンが響き渡る。

一方通行「何だァ?」

麦野沈利「…チッ、めんどくさいな」

 “窓のないビル”から、無機質な機械音声の放送が流れ始める。

 『学区長の皆様、招集会を行います。至急、第一学区“窓のないビル”までお越しくださいませ』
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