とある狭間の平行世界
□第05話 第三学区B
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第一学区“窓のないビル”内部。
今現在、学園都市が抱えている“とある問題”について、第二学区から第四学区までの三人の学区長が月に数回のペースで集められている。
一つの丸テーブルを均等に囲む形で三人が着席し、テーブル中央に設置されたスピーカーから声が聞こえる。
統括理事長『諸君、よく集まってくれた』
彼こそが、この学園都市を統括する理事長である。
第一学区の“窓のないビル”に住まう唯一の人物なのだが、誰一人として顔を見たことがない。
故に“彼”という表現は正確ではなく、もしかしたら“彼女”という場合もある。
垣根帝督「挨拶なんざいらねえよ」
麦野沈利「あら、またアンタが来たのね。ご苦労様」
垣根は第三学区の副学区長であり、本来なら学区長同士の集まりには応じる必要がない。
ここに垣根が出席している理由は、第三学区の学区長に問題があった。
その件に関して口を挟んだのは、第二学区の学区長“御坂美琴”だった。
御坂美琴「一方通行ったら、まだ引きこもってたのね……。もう死んでんじゃないの?」
垣根帝督「いや、それはねえよ。今日は外で見かけたしな」
御坂美琴「へぇ、珍しい。でも話し合いには不参加なのね」
垣根帝督「レストランで俺を残して消えやがったからな。ったく、何処に行ったんだか……」
麦野沈利「…………」
麦野は浜面たちを通して知っていた。
おそらく垣根の言っている一方通行とは、この世界とは別の世界からやって来た一方通行のことだろう、と。
麦野沈利(別世界なんて、浜面が二人現れなきゃ信じてなかったわね……。今この二人に話しても、信じてもらえないでしょうし。黙ってるのが適当かな)
統括理事長『では、早速“いつもの議題”を提示させてもらうとしよう』
統括理事長の言葉に、三人は一斉に黙ってスピーカーを見据える。
統括理事長『………“新学区、第五学区の有効活用法について”…』
こうして、今までと同じように会議が行われていく。
第三学区。
見渡す限りに水源が広がっている第三学区は、他の学区と比べて非常に涼しい。
その為か、自然に囲まれている第二学区とは別の意味で空気が新鮮だった。
浜面仕上A「すぅ〜〜、はぁーー……ッ。気持ちいいなぁ、ここ」
上条当麻A「だな。こりゃ涼しい…」
上条当麻B「この第三学区は環境の良さが誇りなんだ。人口も学園都市内で最も多い学区だし、それだけの人気がある」
一方通行「人口? ンなモンいちいち集計してンのか?」
浜面仕上B「あぁ、そういえばお前たちの学園都市って何十番も学区があるんだったけな。でもここは四番までしかいないから、お前たちから見れば総人口数も少ないと思う。ざっと230人だ」
浜面仕上A「確かに少ねぇな…。俺らんとこの学園都市は230万人だぜ」
浜面仕上B「万倍かよ……。こっちの学園都市だったら即パンクだぜ……」
一方通行「……オイ、ちなみに超能力者(レベル5)は何人いやがンだ? 俺らンとこは七人だが、こっちも変わンねェのか?」
一方通行の質問に、浜面Bは目を丸くして首を傾げた。
浜面仕上B「“れべるふぁいぶ”……? 何だそりゃ?」
一方通行「はァ? 何って、そりゃ…」
上条当麻B「おい皆、目的地が見えてきたぜ」
会話に割り込んだ上条Bが、前方の高級高層マンションを指差す。
よく見れば、上条Bの指先は最上階を示しているようだった。
上条当麻A「……ま、まさか、あの最上階に第三学区の学区長がお住まいなのでせうか……?」
上条当麻B「あぁ、そうだぜ。俺も住みてぇなぁ、いいなぁ、羨ましいなぁ」
浜面仕上B「一月分の家賃も払えねぇくせに」
上条当麻B「それを言うなってーの……」
上条Bと浜面Bが話している中、上条Aと浜面Aは一方通行に視線を移す。
一方通行「……何だよ」
上条当麻A「……いや、何でもない」
浜面仕上A「こっちでもあっちでも、一方通行の立ち位置ってのはトップなんだなぁ……。畜生」
二人の上条と二人の浜面、そして一方通行の計五人は第三学区の中心に建つ高級高層マンションへと入っていった。