とある狭間の平行世界
□第06話 第二学区B
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第三学区のほぼ中央に位置する、高級高層マンション。
その最上階の一室に、第三学区の学区長・一方通行は住んでいた。
この世界に飛ばされてきた一方通行たちと区別するため、飛ばされてきた側を“A”とし、この世界に元々暮らしている側を“B”とする。
今、上条Aたちは上条Bたちと共に一方通行Bの部屋へと移動してきた。
一方通行A「ンで? 聞かせてもらおォじゃねェか。俺たちを呼び出した理由ってヤツを具体的に」
上条当麻A「待ってくれ、一方通行。こっち側の俺たちにだって分かってないこともあるみたいなんだ。ゆっくり聞いていこうぜ」
一方通行B「そっち側の上条は頭が回るみてェだな」
上条Aたち三人と、上条Bたち三人。
一方通行Bに注目する形でテーブルに着いた。
一方通行B「まず、この世界のことを説明しようと思うンだが……正直、面倒だ」
一方通行A「オイ」
一方通行B「だから、まずはテメェらの学園都市ってのがどォいうモンなのか教えてもらおうか」
上条当麻A「あ、あぁ、分かった」
上条Aは上条Bたちに学園都市のことを話した。
なるべく具体的に、だけどあまり時間は掛けずに。
一方通行B「大まかには理解できた。もォ充分だ」
上条当麻A「そっか」
一方通行B「じゃあ次は俺らの番だ。上条、説明してやれ」
浜面A&B((一方通行は説明しないんだな……))
上条Bが上条Aたちに向き直り、この世界の学園都市について説明を始める。
上条当麻B「さっきも言ったが、この学園都市はそっち側と比べてかなり狭いと思う。学区が二十三もあるなんて、むしろ俺たちからしたら考えられない。人口だって230人しかいないんだ」
一方通行A「ンなことは、もォとっくに把握してンだよ」
上条当麻B「…分かった。じゃあこの説明は飛ばすぞ。次に、そっちの俺が説明した“能力者”って話だけど、俺たち側でもその言葉は使われてない」
浜面仕上A「え? じゃあ学園都市の住人は、皆ただの人間なのか?」
浜面仕上B「いいや、そういう意味でもない。むしろ、この学園都市に“ただの人間は一人も存在していない”んだ」
一方通行B「正確に言うなら、俺たちは誰一人として“人間じゃねェ”ンだよ」
その言葉に上条Aたちは眉を潜めて首を傾げた。
浜面仕上A「それ……どういう意味だ?」
上条当麻B「お前たちのところが“能力者”として呼んでいるように、俺たちにも俺たちなりの名称がある。そしてそれは、俺たちを“人間とは異なる種族”だと表している意味も含んでるんだ」
そして上条Bは、自分たちの種族を口にしたのだ。
上条当麻B「俺たちは“能分者(ハーフマン)”。人間の姿をしていながら、人間とは確実に異なる生き物なんだよ」
その時の上条Bの髪は、まるで髪の一本一本
が生き物のように蠢いていた。
第二学区、御坂美琴の家。
第二学区の学区長を務めている御坂は、普段は第三学区に出掛けていることが多い。
特に出掛ける理由はないのだが、その間の学区長としての業務は白井がサポートしてくれているのだとか。
そんな御坂の家に、本日は来客が訪れていた。
御坂美琴「こんな家でごめんね。居心地悪いでしょ?」
麦野沈利「……一応、自覚はあったのね…」
第四学区の学区長・麦野沈利は、両手で自分の体を抱きしめるようにして身を震わせる。
麦野沈利「アンタの部屋、寒すぎんのよ!! 室温、今何度よ!!」
御坂美琴「えーっと……、マイナs」
麦野沈利「あーごめん! やっぱ聞きたくない! 聞いたら余計に寒くなるわ!」
これが、御坂が意味もなく第三学区へ行く理由にも繋がる。
とにかく“暑がり”なのだ。
森の自然に囲まれた第二学区より、水に満ち溢れた第三学区の方が一段と涼しい。
その涼しさを求めて、御坂は第三学区へ足を運んでいるのだ。
御坂美琴「ごめんごめん。でも、すぐ慣れるわよ」
麦野沈利(客を気遣って冷房を切るって選択肢はないのね……)
ちなみに言えば、御坂の部屋には暖房器具の類いは何一つ置いていない。