とある狭間の平行世界

□第07話 第五学区A
1ページ/2ページ


 この学園都市には、四つの学区が存在している。

 第一学区を中心として、北に第二学区、南に第三学区、西に第四学区。

 そして、東には今現在の地図にも載っていない、新たに開拓された新学区が存在していた。

 それが第五学区。

 まだ一人も住人がいなければ、目立つ建物も建てられていない、本当に新しい学区だった。

 上条たち六人は、その第五学区へと足を踏み入れていた。

 普段は学区長以外の立ち入りが禁止されているが、学区長の付き添いと言う場合は例外となっている。

一方通行B「一応テメェらは俺の付き添いってことだ。忘れンじゃねェぞ」

一方通行A「だから何かあるってわけでもねェンだろォが」

 確かに、付き添いだから○○に気をつけろ、みたいなことがあるわけではない。

 おそらく、ただ言ってみただけなのだろう。





 上条たちがここに来たことには理由があった。

 前々から口にされている“戦争”についてだ。

一方通行B「今、学園都市は“第五学区を誰のものにするか”って問題を抱えてる」

上条当麻A「誰のものって…、学園都市は皆が住む都市だろ? 誰のものも何もないんじゃないか?」

上条当麻B「それは、あくまでも“そっちの学園都市”の常識だろ? 俺たちの学園都市は、少しシステムが違うんだよ」

浜面仕上A「ん? どういう意味だ?」

 上条Bは右手を見せてみる。

 その指の先はラッパのように開いており、手の平から伸びてきた棘の先端もラッパ状に開いた。

上条当麻B「俺たち“能分者(ハーフマン)”は、人間と人間以外の生物の融合体だ。そして、俺は“ラッパウニの能分者”だ」

 口を開いた浜面Bは、全ての歯を牙へと変え、上顎の犬歯を顎の下まで鎌のように歪曲させて伸ばす。

浜面仕上「俺は“グンタイアリの能分者”だ。そんでもって、大将の出身学区は第三。俺は第四。ここまでは大丈夫か?」

一方通行A「そこまでなら理解した」

 ラッパウニの上条は第三学区に住んでいる。

 グンタイアリの浜面は第四学区に住んでいる。

 彼らが言いたいことを、簡単にまとめればこうなる。

上条当麻A「でも、それがどうしたんだ?」

浜面仕上B「絹旗は“ヒグマの能分者”で、第二学区に住んでる。さて、出身学区の違う俺たちは、他にどこが異なってるでしょうか!」

 第二学区の絹旗は“ヒグマ”。

 第三学区の上条は“ラッパウニ”。

 第四学区の浜面は“グンタイアリ”。

一方通行A「……テメェンとこの主は、何の能分者なンだ?」

浜面仕上B「………それって麦野のことか…? 何か引っかかる言い方だけど、アイツは“スズメバチの能分者”だ」

一方通行A「なるほどな。これで学区同士の違いは理解できた。第五学区を奪い合う理由も、大体の仮説が立ったぜ」

 一人で勝手に納得してしまう一方通行A。

 置いてけぼりとなってしまった上条Aと浜面Aは、一方通行に答え合わせを要求する。

一方通行A「ちったァ頭使ったらどォだ。学区全体の風景でも思い返してみろ」

上条当麻A「学区全体の?」

 第二学区は、自然に囲まれていた。

 第三学区は、水に満ちていた。

 第四学区は、危険地帯が広がっていた。

浜面仕上A「あー……、思い出したくなかったな……。後から聞いた話じゃ、第四学区の半分は毒ガスが充満してる危険地帯だって言うじゃねぇか……」

浜面仕上B「おぉ。だから暮らしていくのが大変でよぉ」

 色々と突っ込んでやりたい発言だったが、ここは無言で対応した。

上条当麻A「……もしかして、第二学区は陸上生物。第三学区は水中生物で、第四学区は昆虫の能分者が暮らしてんのか?」

上条当麻B「必ずしもそうとは限らないが、学区内の90%以上はそれで正解だ。第二学区は陸上生物の能分者が多く住んでるし、第三学区は俺みたいな水中生物の能分者が多く住んでる」

浜面仕上B「絹旗と滝壺は第二学区出身の陸上生物能分者だけど、元は第四学区の住人だったんだ。だから、第三学区にいる住人全員が水中生物能分者とは限らないってことだな」

 ちなみに、第四学区の住人は陸や水を問わず、小型生物の能分者が多い学区らしい。

一方通行B「だが第四学区は、知っての通り危険地帯が広がってることで、他の学区に移り住むことを余儀なくされた連中が多い」

浜面仕上B「絹旗も滝壺も、本当は第四学区にいたいって言ってたけど、家がある場所が毒ガスで覆われちまってな……」

 そして、その問題があった時に、この第五学区が開拓されたのだ。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ