とある狭間の平行世界
□第08話 第四学区B
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夜の第四学区。
麦野は自宅の窓からボーッと月を眺めていた。
浜面仕上A「……よぉ」
麦野沈利「……」
振り返ると浜面仕上がいた。
麦野沈利「……アンタは、どっちの浜面?」
浜面仕上A「俺は元の……いや、お前らから見て別世界の浜面だ」
麦野沈利「…そう」
それだけ言うと、麦野は再び窓の外に顔を向ける。
浜面仕上A「……第四学区のために、住処を移動させたいんだってな……」
麦野沈利「…へぇ、もうそこまで知ってんだ……。じゃあ、戦争のことも…?」
浜面仕上A「あぁ、聞いた」
くるりと浜面と向き合った麦野は、いつも通りの表情で話し出した。
麦野沈利「お互いに利点があるから、ってことで第二学区と手を組まないか。そういう話は?」
浜面仕上A「……いや、聞いてない。そんな話があるのか?」
麦野沈利「まだ返答してないけどね。今日の会議で、明確に戦争が起きることも決定したの。急な話だけど、三日後だって」
浜面仕上A「………それも知らなかったんだけどなぁ…。もう三日後に、戦いは始まっちまうのか」
麦野沈利「えぇ」
そこでお互いに話す言葉が続かず、沈黙が続いた。
浜面仕上A「……麦野は、どうしたいんだ?」
麦野は、浜面の言わんとしていることが分からなかったのか首を傾げた。
浜面仕上A「もしも麦野の声一つで、何でも思い通りに出来るとしたら……。今、麦野は何をどうしたいんだ?」
麦野沈利「……夢を語るには合格点ね。でも、それは現実的じゃない」
そうは言ったものの、麦野は少し考えるような素振を見せた。
麦野沈利「でも、そうね……。全てが私の思い通りに出来るなら。戦争の勝者は第四学区で、誰もそれに意見しないで、元々暮らしてた住人たちも明るく楽しく幸せに暮らせる未来。そんなのが妥当じゃない?」
浜面仕上A「…………」
これが、麦野の本音であり悩みである。
戦争は仕方がないと受け入れてはいるが、望んでいるのは第四学区の純粋な平穏。
麦野沈利「あ、もう一つあった」
浜面仕上A「…何だ?」
浜面へと近寄ってきた麦野は、そっと耳元で呟いた。
麦野沈利「浜面が、私だけに夢中にならないかなぁ、ってね♪」
頬に吐息がかかり、唇が触れたかもと錯覚する。
それが本当に錯覚だったのかは、不意を突かれた浜面には分からなかった。
麦野沈利「今日はここに泊まっていきな。私一人じゃないから賑やかよ」
それだけ言い残し、麦野は部屋を出て行った。
麦野の家の浴室は、やはり豪華な造りだった。
さすがは第四学区の学区長だ。
しかし、浜面はそんなことを考えるだけの余裕もない。
浜面仕上A「…………」
滝壺理后「はまづら? 鼻血でてるよ?」
浜面仕上A「そりゃ血圧だって上がるわ!! こっちの俺はどんな生活送ってんだよ!!」
滝壺理后「…? こっちのはまづらは…」
浜面仕上A「いや、いい! 言わなくていい! 聞いたら聞いたでヤバい気がすんのは昼間から熟知してんだよ!」
麦野の家に泊まることになった浜面だが、今日は滝壺と絹旗も泊まっていくらしい。
これは確かに賑やかだ。
ちなみに、こちらの世界の浜面は第一学区の用事があるらしく今は不在だ。
彼もここに泊まるらしいが、帰りは夜中になるという。
浜面仕上A「滝壺さーん! 頼むからタオルをしっかり巻いてくれッ! 見えちゃうから! おっきなソレが見えちゃうから!」
滝壺理后「こっちのはまづらなら、いつもタオルを剥ぎ取ってくる側なのに…」
浜面仕上A「デデーンッ!! こっちの俺、アウトーー!!」