とある狭間の平行世界
□第09話 第三学区C
1ページ/2ページ
第三学区、一方通行の部屋。
一方通行B「オマエらンとこの上条、よォやく第二学区に向かったみてェだな」
一方通行A「最後の最後まで泣きながら戻りたくねェって叫ンでたがな」
上条Aは第二学区の偵察に向かわなければならない。
そのために呼ばれたようなものなのだ。
浜面は第四学区、一方通行は第三学区。
そして上条は第二学区へ。
一方通行A「こっち側の上条も道連れにすりゃァ少しはマシだったンじゃねェか?」
一方通行B「残念だが、メリットがねェのは本人が一番分かってやがる。上条当麻に関わればどうなるか、なンてのは嫌ってほどにな」
一方通行A「違いねェ…」
上条Bは、上条Aに道連れにされる前にさっさと自宅に帰っていった。
巻き込まれれば不幸のどん底まで引きづり込まれるのは、上条本人だからこそ心の底から理解しているのだ。
その時、一方通行の部屋を訪れる者がいた。
一方通行A「あァン? 客だァ? このマンションの最上階に来るってことは、副学区長の垣根か?」
一方通行B「………いや、違うな…」
そう呟いた一方通行Bは、来客の出迎えに向かう。
次に一方通行Bが戻ってきた時、その後ろには見知った顔が二つ並んでいた。
土御門元春「にゃーにゃー、お邪魔するぜい! おぉ、ホントに一方通行が二人いるぜよ!」
結標淡希「あら、話は本当だったのね。こうして見ると凄い光景だけど」
一方通行B「ぶつくさウルセェよ」
金髪にサングラス、アロハシャツを着た高校生男子。
二つ結びにした赤髪、胸元にサラシを巻いた女子高生。
土御門元春と結標淡希だった。
一方通行A「こっち側の土御門と結標か。やっぱり見た目は変わらねェンだな」
土御門元春「おぉ、ってことはそっち側にも俺たちはいるんだな? どんな感じなんだ?」
一方通行A「テメェとまるで変わらねェよ」
結標淡希「何か、自分の知らない自分が別の世界にもう一人いるって、変な感じね……」
一方通行Aは一方通行Bへ視線を移した。
一方通行A「俺たちのことを話してやがったのか」
一方通行B「一度言ったと思うが、オマエらをこの世界に呼び出したのはこの俺だ。その方法は昼間の内にも言ったよな?」
一方通行Bが上条Aたちを呼んだ張本人。
この戦争の被害を少しでも軽減させる為だ。
その方法を一方通行Bは既に語っていた。
一方通行A「開拓されたばかりの第五学区に侵入し、空間そのものに亀裂を入れて別世界同士を繋げた。さっぱり意味が分からねェが、こっち側の第五学区と俺ら側の第十九学区を意図的に通じるように手配した、ってことだろ」
一方通行B「簡単に言えばな。間違いじゃねェから訂正しねェよ」
第十九学区に繋がったのは偶然らしい。
今のこの事態を思うと、人通りの多い街中に繋がらなかったのが幸いだった。
一方通行Bは、その過程で土御門たちに事情を話して準備を手伝ってもらっていたらしい。
聞いた話によれば、こっちの土御門たちは一方通行Bにとって数少ない悪友なんだとか。
一方通行B「普段は引きこもってるからな」
一方通行A「自分で言ってンじゃねェよ。情けねェ」
一方通行Aは今度は土御門たちに視線を向けた。
一見すれば、彼らも普通の人間と変わらないし、一方通行Aの知る二人と相違ない。
だが忘れてはいけない。
この世界に普通の人間は存在せず、全ての住人が能分者であるのだと。
一方通行A「テメェらも能分者なんだろ? 名乗れるぐらいのレベルに達してやがンのか?」
一方通行が言うのは、人口230人の上位約30人に含まれているのか、という意味が込められている。
全員が能分者といえども、目に見える力を振るえるものは全体の約88%なのだから。
土御門元春「あぁ、順位としては真ん中ですたい」
結標淡希「私はその少し上ね。もうすぐ一桁の順位にも上れそうだから力に磨きをかけるわ」
約30人の真ん中ということは、土御門は抱く円都市第15位ということだろう。
そして結標はそれよりも上位であり、まだ一桁に到達していないということから学園都市第14位から10位の間ということになる。
一方通行A(上条と浜面も、こっちの自分たちの順位を聞いてたみてェだったな。まァ、あの反応からして後半順位は確実。しかも浜面の方が上位だったンだろ……)
この時の一方通行は、まさか上条Bの順位が最下位の学園都市第30位であることを知らない。