とある狭間の平行世界

□第10話 第二学区C
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 上条当麻は第二学区に来ていた。

 といっても、堂々と外を歩いているのではなく、辺り一帯の森の木々に身を隠しながら。

上条当麻A「……何も悪いことしてねぇのに、何で俺がこんな目に…」

 理不尽さを感じながら、森の中を進む。

 目指すは第二学区の学区長、御坂美琴の自宅だ。

上条当麻A「戦争についての心境とか、余所者の俺が訊いても返り討ちに遭うだけだろ……」

????「こんな所で何してるんですか?」

上条当麻A「ーーーッ!!?」

 突如、背後から声が掛けられた。

 振り返ってみると、そこには“一応”見知った少女が立っていた。

上条当麻A「……えーっと、佐天涙子?」

佐天涙子「は〜い、佐天で〜す。こんばんは」

 元気よく挨拶する佐天涙子は、上条Aの住まう世界では御坂たちと一緒にいるところを見かけたことがあった。

佐天涙子「あ、もしかして敵陣視察ですか? 見つかったのが私じゃなかったら、ホントに殺されてましたよ?」

上条当麻「え、あぁ……、あはは……」

 この言葉が大袈裟でなければ冗談でもないのだから、もはや笑うしかない。

上条当麻A「そ、そういえば、佐天はこんな時間に何を?」

佐天涙子「ん? あぁ、ちょっと面白そうなものを嗅ぎ付けまして」

 そう言って佐天は鼻をクンクンする。

上条当麻A(嗅ぎ付ける? 鼻…? ってことは、佐天は犬か何かの能分者なのか……?)

 そのことを訊ねてみようかと思った矢先、上条Aは佐天に頭を押さえつけられる。

上条当麻A「……ちょッ!? いきなり何ッ」

佐天涙子「シーッ! 静かに」

 佐天は、木々の隙間から何かを観察しているようだ。

 何事かと思って上条Aも覗いてみると、そこには見慣れた二人が森に隠れるように並んで座っていた。

 そこにいたのは、第三学区の副学区長・垣根帝督だった。

上条当麻A「……何で、こんなところに…」

佐天涙子「それ、上条さんが言えるセリフじゃないですよ? 同じ第三学区の住人じゃないですか」

上条当麻A「え? あ、あぁ…そうだな」

 垣根の隣に座っているのは少女だった。

 彼女も佐天と同様に、一応は見覚えがある。

佐天涙子「初春〜。何の話、してんのかなぁ〜……」

上条当麻A「……あの子も、第三学区の住人だったっけ?」

佐天涙子「え? 何言ってるんですか。初春は第二学区の住人ですよ?」

上条当麻A「え? あ、あぁ、そうだったなッ」

佐天涙子「……大丈夫ですか?」

 かなり不審に見られてるだろうなぁ、と思いながら上条Aは整理する。

 確かに、初春が第三学区の住人ならば第二学区で一緒にいる理由がない。

 しかし、それでは何故垣根が第二学区に来ているのかが分からない。

 二人が第二学区に一緒にいる理由として、昼間の浜面Bの説明が頭を過ぎる。

上条当麻A(元は第三学区の住人で、今は第二学区に住んでいる。そう考えるのが妥当か……)

 二人が何を話しているのかは分からないが、会話の節々は微かに聞こえていた。

 その中には、気になる単語も含まれている。

上条当麻A(……ッ。今、確かに“戦争”って聞こえたような……。でことは、これから起きる戦争について、話し合ってるのかもッ)

 そう思い至った上条Aは、木々の合間を縫って接近を試みた。

佐天涙子「ち、ちょっと、上条さんッ!?」

 最初は驚いた佐天も、すぐに上条Aの背中を追っていた。
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