とある狭間の平行世界
□第12話 学園都市A
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戦争が始まった瞬間、真っ先に動いたのは第三学区だった。
垣根帝督「第三学区の住人共!! 第一学区を駆け抜け、第二学区を攻め落とせえッ!!」
垣根を筆頭に、第三学区の猛者たちが第一学区へと向かう。
まずは御坂美琴を狙いに行くらしい。
一方通行A(あくまで、第四学区の第四位は後回し、ってか。俺は第三学区から動けない以上、攻めてきた連中を昏倒させていくしかねェな)
近場の物陰に隠れながら、一方通行Aは第三学区を出て行く垣根たちを見送った。
あの集団の中には、おそらく上条当麻が二人混じっていたことだろう。
第一学区に入ってから、それぞれの学区を攻めに行く。
他の学区も同じ攻め方をする以上、第一学区で他の学区同士がぶつかることは当然である。
故に、第一学区が最も激しい戦場と化す。
上条当麻A「……ん? 誰か待ち構えてるぞ!?」
第一学区に入ってきた第三学区の皆を、一人の少女が待ち構えていた。
垣根帝督「ーーーチッ!! 厄介な女だッ」
流れるような金髪に、キラキラと星が輝く瞳。
こちらの学園都市では、アイドルとして存在している第二学区の住人。
そして、学園都市第五位の能分者・食蜂操祈が立っていた。
食蜂操祈「ふふふ、いらっしゃい…。たっぷり遊んであげちゃうゾ☆」
垣根帝督「チッ、相手が悪い!! 奴を無視して第二学区を攻めるぞ!!」
第三学区の集団が、食蜂を避ける形で二つの軍に分離する。
だが、これを見逃すために食蜂も立っていたわけではない。
食蜂操祈「ごめんね〜。御坂さんにお願いされちゃ、ここを全員通すわけにはいかないんだよねぇ」
垣根帝督(……しまった!? 最初から足止めする気はなかったのかッ!!)
食蜂一人では、第三学区の住人たちを足止めできるはずがないと本人が自覚していた。
なら、何故一人で待ち構えていたのか。
食蜂操祈「一つだった軍が、ピッタリ半分……。私の能分力で、一気に兵力が半分以下になれば、御坂さんも文句ないわよねぇ」
垣根帝督「ーーーッ!! 全員、バラバラに散れぇッ!! 第二学区へ向かわずに、今はこの場を離れろおおおッ!!」
時既に遅し。
垣根から離れてしまった半分の軍へと、食蜂が一瞬で接近する。
上条当麻A(ーーー速いッ!?)
逃げ場を失った半分の第三学区勢力は、目の前に現れた食蜂の姿に脅える時間もなかった。
食蜂の肌が、黒とオレンジに染まっていき、歯が鋭く尖り始める。
食蜂操祈「……いただきますッ☆」
そして一瞬で、何十人もの首元に次々と食らい付いていく。
第三学区の住人たちが、次々と首元から勢いよく血を流して倒れていく。
上条当麻A「……嘘だろ…。第三学区の皆が、一気に半分も……ッ」
上条当麻B「あれが、学園都市第五位の力さ。食蜂操祈は“シベリアトラ”の能分者。ネコ科最大の猛獣にして、その俊敏さも伊達じゃないんだッ」
幸いにも、上条は二人とも垣根側の軍に混じっていた。
垣根が軍を離れ、食蜂へと突進していく。
垣根帝督「あの女は俺が始末するッ!! 残った連中は先に第二学区へ進めッ!!」
垣根の指示を受け、上条たちを含めた軍は第二学区へと向かった。
食蜂操祈「ふふふ、良いのかなぁ? あの子たちだけで、御坂さんに勝てる人がいるとは思えないゾ」
垣根帝督「安心しろ、俺がいる。それに、俺に勝てねえのはテメェも一緒だ」
垣根の瞳孔が大きく広がっていく。
肌が目に見えるほどザラザラと変化し、顎と首元にはエラが開き始める。
垣根帝督「食うか食われるか、勝者は一人だッ!!」
食蜂操祈「住人思いなのね。そういう人、大好きよ☆」
上条当麻A「大丈夫なのか!? たった一人で戦っててッ」
上条当麻B「簡単に負けはしないだろうけど、苦戦するのは間違いないな。相手が食蜂じゃ尚更に」
上条当麻A「そういえば、アイドルなんだよな? やっぱ無意識に加減しちゃったりするもんなのか?」
上条当麻B「いいや、食蜂のファンがワザと噛み付かれに行って窒息死するケースは珍しくねぇから、食蜂が急所を攻撃することに躊躇がねぇんだよ」
上条当麻A「垣根さんが心配だとか、食蜂が強いだとか、一気に失せていったよ。そのファン、真正の馬鹿だろ」