とある学園の死闘遊戯U
□第05話 幻
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上条当麻「“熱いコーヒーを飲み下せ”……」
土御門元春「なるほどな……。確かに超電磁砲には難解な課題だぜよ」
白井から受け取った美琴の携帯に記載されていた、一日目の課題。
舌を失った美琴にとって、今日中に熱いコーヒーなど飲めるはずがない。
しかし、飲まなければ焼死してしまう。
どちらにしろ苦しむならば、美琴は生きる望みに賭けたのだろう。
白井黒子「腸が煮えたぎる思いですわ……。あんな状態のお姉様に、こんな仕打ちを……」
土御門元春「“あんな状態”だから、この課題にしたんだろうな……」
携帯を握りしめる上条は、新しく届いていたメールの件名を見て話し出す。
上条当麻「とにかく、御坂は課題のクリアーに成功した。土御門と白井も、早くクリアーしてスミスの情報を集めた方がいい」
白井黒子「スミス……。あの青年の名前ですの?」
土御門元春「俺が名付けた仮名だ。奴のことは好きに呼べ」
白井黒子「……いえ、スミスで統一させていただきますわ」
その時、白井の携帯から着信音が響く。
土御門元春「進展の予感か?」
白井黒子「いえ、風紀委員の同僚からですわ」
そう言って、通話に出る。
病院内だったが、この状況では構っていられない。
白井黒子「もしもし初春? 何か事件ですの?」
初春飾利『い、いえ……。事件ってわけでもないんですけど……』
初春の声は、何やら歯切れが悪かった。
白井黒子「どうしましたの?」
初春飾利『それが……、垣根さんと連絡が途絶えてしまって。それだけなんですが、何か、こぅ……、異様な胸騒ぎが……』
白井の通話は少しだけ続き、やがて終わった。
白井黒子「超能力者の第二位、垣根帝督との連絡が途絶えているそうですわ。異様な胸騒ぎですって……」
上条当麻「垣根さんが……? 異様な、胸騒ぎ……?」
それを聞いた上条にも、嫌な予感が浮かび始めていた。
一方通行の携帯に、上条から着信が入る。
一方通行「どォした?」
上条当麻『一方通行。課題をクリアーしたら、スミスの情報を集めるついでに垣根さんも探してみてくれないか?』
一方通行「……何故だ?」
一方通行にしてみれば当然の返答である。
しかし、その答えを聞いた一方通行の返答は、ある意味正論でもあった。
一方通行「馬鹿馬鹿しいにも程があるぞ、上条。その役目はテメェみてェなゲーム部外者の仕事だ。参加者である俺には、その件に加入する意味もメリットもねェよ」
上条当麻『なッ! お、おい一方通行ぁ』
一方通行は通話を切る。
普段の彼ならば、面倒だと言いつつも協力していただろう。
しかし、今回の彼には時間がない。
一方通行「悪りィな上条……。こっちは、時間が惜しいンでなァ……」
そう呟いた矢先、再び携帯が鳴りだした。
着信の相手は“黄泉川愛穂”だった。
一方通行「………次から次へと、何だってンだよ……」
とりあえず通話ボタンを押す。
黄泉川愛穂『おぉ、一方通行じゃんか!?』
一方通行「当たり前ェだろォが。何の用だ?」
黄泉川愛穂『何の連絡もなしじゃ、心配する以外にないじゃんか』
一方通行「…………心配なンざいらねェよ。こっちは大丈夫だ」
心配してくれている。
その存在が、一方通行の内面をくすぐるように揺らしていた。
黄泉川愛穂『一方通行……、あの飛行船のことなんだが……』
一方通行「あァ?」
そこで、ふと黄泉川の声色が変わる。