とある学園の死闘遊戯U
□第06話 遊
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時刻は一日目の夕方6時。
飛行船の液晶画面に、再び青年が映し出されていた。
病院のある第七学区から出てきた土御門は、飛行船を見上げながら笑う。
土御門元春「はぁ〜……、どうやら、まぁた何かが始まる予感だぜい」
土御門の予感は当たりか外れか、青年は開口一番に宣言した。
スミス『お楽しみ、エクストラゲーム!』
エクストラゲーム。
聞きなれないワードに、学園都市中の住人が注目しているだろう。
スミス『頑張っている参加者の方々には申し訳ないのですが、課題をクリアーしていない方が、どうやら多いようなのです。これではゲームになりませんね』
まだゲームを信じ切っていない強者は、課題をクリアーぜずにいるらしい。
人体発火事件は本物だが、この事件に乗った馬鹿のお遊びとでも考えているのだろう。
実際はそうなのかもしれないが、このゲームも本物だという理解が追いついていないということだ。
スミス『一日目の犠牲者が一気に増えてしまうのは、我が輩としても問題なのです。そういうことで、ここからエクストラゲームを始めたいと思います』
土御門より離れた場所で、一方通行も飛行船を見上げていた。
一方通行「エクストラゲーム、だと……」
液晶画面を睨みつけるが、青年は構わずに続ける。
スミス『エクストラゲームは、まだ課題をクリアーしていない方々が参加するものと、クリアーした方も含めた全ての方々が参加するものの、お二つをご用意いたしました。まずは、全員参加のエクストラゲームの説明をさせていただきます』
液晶画面に映る青年の横に、大きな地図が映される。
それは、この学園都市の地図だった。
スミス『これから六時間ごとにルーレットを回し、その度に当たった4学区を“侵入禁止エリア”とします。この学区に入ったら最期、焼死してしまいますのでご注意を』
軽快なリズムと共にルーレットが回り始める。
止まった時、そこには四つの学区が地図上で点滅していた。
スミス『今から夜の0時、つまりは翌日に日付が変わるまでは、第三学区・第十五学区・第十六学区・第二十学区、以上の4学区が侵入禁止エリアとなりました』
一方通行(………とりあえずは、問題なしか……)
一方通行がいるのは第七学区。
日付が変わるまでは安心というわけだ。
スミス『ちなみに、侵入禁止エリアが決定した時点では、まだそのエリアは安全です。正確には、決定してから十分後に禁止エリアとして機能しますので、今現在この学区にいらっしゃる方々は、お早めに移動をお願いいたします』
一方通行(……それもそうか…。入った瞬間に焼死しちまうなら、最初からその学区にいた連中は助からなくなっちまうからなァ)
昏倒事件でも覚えのある“侵入禁止エリア”という言葉。
侵入禁止エリアのルールをとりあえずは把握した一方通行は、やはり前回の事件との関連性が高いと睨む。
続けて、青年がもう一つのエクストラゲームを説明した。
スミス『さて、いまだに課題をクリア−出来ていない方々へのエクストラゲームを説明いたします。ルールは簡単。第七学区と第二十二学区のどちらかへ移動してください』
一方通行(ここに集まれってのか……)
一方通行は、既に課題をクリアーしている。
つまり、このエクストラゲームに一方通行が参加する資格はない。
スミス『ただし、既に第七学区にいらっしゃる方は第二十二学区へ、第二十二学区にいらっしゃる方は第七学区へ移動してください。それだけで、未クリアーの課題をサービスで免除して差し上げます』
一方通行「ハッ、サービス精神に涙が出るね……」
思わず声に出る。
課題をクリアーした者の中には、移動するだけで課題免除されることは憤慨に値する者もいることだろう。
スミス『しかし、これは先着です。このゲームを本物と認識していただくためのエクストラゲームですので、ペナルティも用意させていただきます』
一方通行「………ペナルティだァ?」
聞きなれないワードを口にした青年は、更に続ける。
スミス『課題をクリアーしていない参加者は19名中8人いらっしゃいます。この八人が二つの学区に移動した際、頭から数えた五人を課題クリアーとして免除いたします』
そして、青年は指を三本立てて言い放った。
スミス『残る、最後となってしまった三人には申し訳ありませんが、その時点で、その場で焼死していただきます』
学園都市中の空気が、凍りついた気がした。