とある学園の死闘遊戯U

□第08話 悲
1ページ/5ページ


 イギリス。

 監禁中である魔術師の監視役として、ステイル=マグヌスが牢獄前の椅子に腰かけていた。

 その傍には、大量且つ色彩豊かな英国料理がズラリと並ぶテーブルに噛り付くように、純白のシスターが座っていた。

 禁書目録を司るイギリスシスターであり、学園都市の上条宅に居候中の少女・インデックスである。

インデックス「まったく、とうまってばヒドいんだよ! せっかく学園都市に戻れるかと思ったのに、入院することになったからイギリスにいろだなんて! また私の知らないところで危ないことした罰だっていうのに、これじゃあ私が罰を受けてるみたいで不快かも!!」

ステイル「まぁ、いつものことじゃないのかな。あんな奴のところより、僕のところなら好きなだけ食べたいものを食べさせてあげるんだけど……、どうかな?」

インデックス「ありがとうなんだよ、すている!! でもごめんね。やっぱり、とうまの作るご飯が一番かも!」

ステイル「……そうか」

 食事の続きを始めるインデックスを余所に、立ち上がったステイルはスタスタと牢獄の格子に近付いていく。

ステイル「で? 用が済んだなら携帯返せよクソ小僧」

ソンシャン「分かりやすいほど器が小せぇな、不良神父。そりゃ八つ当たりかゴルァ」

 格子を挟んで睨み合う二人の魔術師。

 上条と通話していたソンシャンは、まだ携帯を返却していなかった。

ソンシャン(何か……、まだ引っかかるんだよなぁ…………)







 上条は、学園都市の街中を走っていた。

 その道中、土御門から連絡が入る。

土御門元春『カミやん! スミスの居場所g』

上条当麻「あぁ分かってる! 俺も御坂妹から聞いたんだ!!」

 数分前、一方通行からも連絡が入り、情報の信憑性が増したところだった。





上条当麻「奴は、第三学区の何処かにいる!!」





 一学区に絞れたことは大きな前進だった。

 御坂妹の情報、一方通行と黄泉川からの情報、土御門と浅月という少年からの情報。

 その全てが一致したのだ。

土御門元春『こいつは予想だが、これからも第三学区は侵入禁止エリアに選ばれていくだろうぜ』

上条当麻「やっぱり、第三学区が三回連続で侵入禁止になったのには理由があったんだな」

 しかし、と上条は違和感も感じていた。

上条当麻(どうも、単純すぎる気がするんだが………気のせいか…?)

 まるで、第三学区が怪しいです、と言っているようなものだと思った。

 これほどまで容易く単純で良いのだろうか?

 土御門との通話を終えた今でも、上条の感じる違和感は消えなかった。

上条当麻「気にしてても仕方ない。とにかく第三学区内には入らなくちゃ!」

 第三学区に向かって、上条は街中を走り抜けていった。







 第三学区の、とある屋内

????「…………!」

 黄色い燕尾服を着た土色の髪の青年が、不意に顔を上げた。

????「……ふ。気付いた方がいらっしゃいますね…………いや……」

 青年は、一度発言を区切ると、次のように訂正した。



????「やっと、気付いていただけましたか……」



 まるで、見つけてほしかった、と言うように。

 青年は静かに、笑っていた……。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ