とある学園の死闘遊戯U

□第12話 消
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 垣根が行動に出る数分前。

 空に手をかざしていた空波の能力が発動した。

空波陸「“空間振動(ソニックブーム)”ッ!!」

 波紋のようなものが空波を中心に流れだし、空の戦場から降り注ぐ余波を、辺りへと退けたのだ。

 空波の能力は、大能力の“正乱波動(ロジカルウェーブ)”。

 空波の半径100m圏内に存在する全ての波を操ることが出来る能力だ。

 ただし、高度な演算能力を必要とする場合は長時間の発動が難しい。

空波睦「結構、応用性が高いんだけど、超能力者の余波を受け流すなんて、使ったことなかったよ、って高度な演算しながらも喋ってるアタシって何気にスゴくない?」

土御門元春「余裕があるなら専念しろ。学園都市に助力する風紀委員なんだろ?」

 土御門の作戦は以下の通りだ。

 まず、一方通行たちに近付かなければ始まらないため、戦いの余波を潜らなければならない。

 そこで空波の力を借りるために連絡を入れて駆けつけてもらった。

 発動に少々時間が掛かったが、彼女の力で空の戦場への一本道を作ることに成功した。

白井黒子「では、次はわたくしの出番ですわね」

土御門元春「頼んだぜい」

 次に、白井の力を使って土御門と初春を、空の戦場へと空間移動させる。

 戦いに巻き込まれないように、少し離れた場所へ。

 ただし、声の届く距離を確保した上で。

 その点の繊細な調整は、白井ならお手の物だろう。

土御門元春「あとは、俺が一方通行を、お嬢ちゃんが垣根帝督を。それぞれ大人しく治めちまえば万事解決、ってところか」

初春飾利「……はい」

白井黒子「行きますわよ。準備は宜しくて?」

空波陸「さっさと済ませてよね、ってあまり能力が長持ちしないことをアピールしとくよ」

 ヒラヒラと、身体に巻きつけた包帯を塞がっている手の代わりに振っている空波。

 ちなみに、これは怪我でもなければゲーム参加者の証でもない。

 あちこちに巻いている包帯は、彼女なりのファッションだ。

 次の瞬間、白井の空間移動が発動し、二人が空中へと転移する。





 しかし、二人が転移した瞬間に変化が起きた。





垣根帝督「うう、うおお、ううううううおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 絶叫した垣根が、一方通行を押し倒す形で飛び掛かり、そのまま弧を描くように地上へと落ちていったのだ。

土御門元春「な、なにッ!!?」

初春飾利「ーーッ!! か、垣根さんッ!!」

 初春の呼びかけも空しく、垣根と一方通行は土御門たちと入れ替わる形で地上へと戻っていった。

初春飾利「……か、垣根…さん……」

土御門元春「チッ!! タイミングの悪いッ!!」

 空中に浮かぶ術を持たない二人は、すぐに降下が始まった。

 二人の傍に、白井が現れる。

白井黒子「お迎えに上がりましたの! これ以上は危険ですわ!」

 二人のを右腕一本で捉えた白井は、再び地上へと戻っていった。







 第十七学区の工業ビル。

 一方通行と垣根帝督は横たわっていた。

 我武者羅に突っ込んだ場所は、自動化された工業ビルだったため人もいない。

 幸いなことに、侵入禁止エリアでもなかった。

垣根帝督「…………」

 垣根の声は聞こえない。

一方通行「後悔してやがるか? テメェがやっちまった、無意味な殺人を」

垣根帝督「……だったら、何だってんだよ……」

 それを聞いた一方通行は、鼻笑いをして答えた。





一方通行「昔のテメェならありえねェな。殺人を後悔するなンてよォ」





垣根帝督「………だな」

 垣根は変わった。

 一人の少女を切欠に更生し、ここまで変わることができた。

一方通行「任せられる人材ってのは、多けりゃ多いほど得ってモンだ」

垣根帝督「……は?」

一方通行「なンでもねェよ」

 そう言った一方通行は、ゆっくりと立ち上がって歩き出す。



一方通行「学園都市を、任せたぞ」



 最後に、そう言い残して……。



 それが、垣根帝督が見た一方通行の最後の姿であり、一方通行が確認された最後の瞬間だった。
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