とある短編の創作小説

□背に腹は代えられない
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 第七学区の、オリャ・ポドリーダ。

 スペイン料理を中心としているファミレスであり、現在“とあるフェア”が行われていた。

御坂美琴「…………」

 行列……とは言えなくても、そこそこのお客が訪れているようで、すでに空席待ちのスペースは人で賑わっていた。

御坂美琴「…………」

 そんな中、腕を組んでイライラした様子を見せつつ、それでも黙って空席待ちスペースのソファに大人しく座っている美琴がいた。

 その横には……。

一方通行「……オイ、もォ帰ってイイか?」

御坂美琴「ダメ」

 即答だった。

 さっきまで黙っていたくせに、妙に張りのある声で。

一方通行「つーかよォ……、何で俺がこンなくだらねェモンに付き合わされなくちゃなンねェンだ……」

 一方通行の言う“くだらないもの”とは、この場で行われているフェアのことだった。



 『オリャ・ポドリーダ、開店一周年記念!

  ご来店いただいたお客様の能力レベルに応じて、豪華賞品をプレゼント!

  本店オリジナル仕様、特性ゲコ太フィギュア!』



一方通行「マジで帰らせてくンねェ? 切実に頼むわ」

御坂美琴「ダメ」

 即答、再び。

 このフェアを見る限り、美琴の友達同士で行けば問題なさそうに見えるが、実は美琴にとって大きすぎるポイントがある。

 プレゼントは、来店いただいたお客様の能力レベルに応じる。

 詳しく言えば、団体で来店したお客のレベルの合計数によって贈呈されるプレゼントの仕様が異なるのだ。

 レベル3のお客が三人で来店した場合は9ポイント分、レベル1のお客が十人で来店した場合は10ポイント分、レベル2とレベル4のお客が一人ずつの計二人で来店した場合は6ポイント分。

 それぞれの来店ポイントに相応したゲコ太フィギュアが、もれなく人数分で贈呈されるのである。

 つまり、団体で連れてくる人数が多ければ多いほど、その者たちのレベルが高ければ高いほど、より豪華なゲコ太フィギュアが入手できるのだ。

一方通行「常盤台の連中か上条にでも頼めばイイじゃねェか。友達が一人もいねェ寂しい学園生活送ってるわけじゃねェンだろ?」

御坂美琴「あのバカにも、黒子にも、初春さんにも、佐天さんにも、妹達にだって何人か協力してもらったわよ。あとは最高の30ポイント分ゲコ太フィギュアでコンプリートなんだからッ」

一方通行「同じ超能力者(レベル5)として言いたくはなかったが、今日だけは言わせてもらうぜ。オマエ、バカだろ」

 レベル0にはレベル0相当のフィギュアも用意されているため、美琴は上条を一人で店に放り込んでいた。

 佐天さんは皆と一緒にランチ、という形で同行してもらったが、集められるだけの妹達を動員しても20ポイント程度までしか稼げない。

 最高得点景品である、30ポイント分ゲコ太フィギュアを入手してコンプリートを達成させるためには……。

御坂美琴「バカとは何よ、バカとは! どうしてもコンプしたかったんだから仕方ないでしょ!」

一方通行「その点もあるが、俺が言いてェのはそこじゃねェよ! 俺が言ってンのは……」



一方通行「そンな私利私欲のためだけに、学園都市の超能力者(レベル5)を六人も集めやがった無駄な行動力のことを言ってンだよッ!」



 今の美琴と一方通行が居座る空席スペースの周辺は、ある種の混沌(カオス)と化している。

垣根帝督「まぁ、好きなものに目を奪われるのは誰にでもあることですよ。私は気にしません」

麦野沈利「つーか当然、今日は第三位の奢りなんだよなぁ? ここまで付き合わされて、何の利益もなしじゃブチコロシても文句言わせねぇぞ」

食蜂操祈「その前にぃ、御坂さんの追求力ってば底なしすぎじゃなぁい? さすがの私もちょっとビックリだったわねぇ」

削板軍覇「俺は散歩していただけで、何の説明もなしに連れて来られたんだが……まぁ、いいか! 大食い勝負なら根性見せるぜ!」

一方通行「オイ、愉快な勘違いしてるヤツがいるけどイイのかよ」

御坂美琴「いいのいいの。ゲコ太が手に入れば何でもいいの」

麦野沈利「清々しいほど素が出てるわね」

 レベル5が六人で、ちょうど30ポイント。

 多少強引ではあったが、これで手早くノルマ達成である。

垣根帝督「それだけ熱心だということですよ………おや…?」

食蜂操祈「んー? どうしたのぉ?」

垣根帝督「…あ、いえ……。空席状況を常に把握していようと、もう一人の自分を店内に微粒子に乗せて飛ばしていたのですが…」

麦野沈利「案外、あんたって従順よね」

削板軍覇「それで? 何かあったのか?」

垣根帝督「それが……」



 店内に極小サイズで浮遊していた、もう一人の垣根。

 次々と入れ替わっていくお客たちを眺めていた中、会計レジにて贈呈されていくプレゼントの山を目にした時、それに気付いた。

垣根帝督「…あん? おい、30ポイント分の景品だが、あと一つしかねえぞ。俺ら以外にポイント稼ぐ奴らがいるか知らねえが…、やばくねえか?」



垣根帝督「……とのことです」

御坂美琴「…………」

食蜂操祈「六人全員分は、もう無理みたいねぇ」

麦野沈利「ていうか、別にいらねぇし」

一方通行(…他のモンで埋め合わせすりゃイイか…。何かしら用意すりゃ、打ち止めも番外個体も構わねェだろ……)

削板軍覇「はっはぁ! そんなに客が入るほど美味いのか。そりゃ楽しみだぜ!」

一方通行「まだ何か勘違いしてンのかよ……って、あァ? どォした、超電磁砲」

御坂美琴「…………」





御坂美琴「……今…、全員のお客を…感電させて……病院送りにすれば…、確実に…ゲコ太が……」

一方通行「ーーーアウトォォォ!! 何考えてンだ、バカ野郎ォ!!」





 後に、ちゃんとフィギュアは入手できました。

 幸い、怪我人はいませんでしたよ(by.垣根)。
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