とある短編の創作小説

□貴重な休日
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 学園都市の闇から抜け出した、元・暗部組織。

 新生アイテムの面々の活動など、日常と何の変わりもない。

 にもかかわらず……。

麦野沈利「浜面ぁ。ドリンクバー、もう一回往復ね」

滝壺理后「私カルピス」

絹旗最愛「じゃあ、私は超メロンソーダを」

麦野沈利「私はジンジャーエールね」

浜面仕上「……へーいへい、分かりましたよ。やっぱ俺のポジションて変わらねーのな」

 見た目は……というより浜面の役割に何の変わりもない。

 まぁ、以前にあった闇の雰囲気が拭えただけマシだろう。

浜面仕上「はいよ、お待ちどーさん」

麦野沈利「ん、ありがと」

絹旗最愛「ていうか、超早くなりましたね。超パシリの鑑です」

浜面仕上「まったく嬉しくねぇ称号をありがとよ」

滝壺理后「…はまづら、ポジションチェンジしたいの?」

 不意の問い。

 その答えは皆も興味があったのか、黙ったまま浜面に注目する。

浜面仕上「んぁー…、別に今の役割に不満があるわけじゃねぇよ。癪だが慣れちまったし。ただ、もうちっと優遇されてぇなぁー、なんてさ……」

麦野沈利「………ふぅーん…」

 ジンジャーエールを飲みつつ、何かを思案している様子の麦野。

 だから? などと言わない辺り、やはり麦野も大きく心情が変化しているようだ。

麦野沈利「じゃあ浜面。今から今日は自由日にしてやろうか?」

浜面仕上「ファッ!! マジで!!?」

麦野沈利「ただし、今日一日だけよ」

浜面仕上「あぁ! もう、今日だけかよ、なんてワガママは言わねぇぜ! マジで休んでいいんだな!? いいんだな!?」

 麦野の返事も聞かず、ヒャッホゥ! と叫びながらファミレスを出ていく。

 しかし、既に伝票に記載されている分以上の代金を置いてから走り出しているところがパシリの鑑である。

 加えて、滝壺にだけ置手紙まで瞬時に書き上げて添えられている。

滝壺理后「…はまづら、私を忘れないでくれた」

絹旗最愛「超速筆でしたね……ていうか、超いいんですか? 浜面を超放し飼いにしちゃって」

麦野沈利「いーのいーの。どうせすぐ気付くから」

絹旗最愛「……?」







 第七学区の街中を伸び伸びと歩き始めた浜面。

 しかし、その軽快な様子はすぐに打ち砕かれる。

一方通行「…あァ?」

浜面仕上「………」

 第一位と遭遇。

一方通行「こンなとこで何やってンだか知らねェが、ちょうどイイ。悪りィが付き合ってもらうぜ」

浜面仕上「その“付き合う”の意味がどういうものか存じませんが、悪い予感しかしないので丁重にお断りした場合は?」

一方通行「頭ァ開けて、脳みその代わりにカニみそでも詰めてやる」

浜面仕上「ですよねー」

 結局、一方通行の命令(買い物の手伝い)に従ってしまう。

 番外個体がいない状況で、大量の買い出しを頼まれていたようだ。





浜面仕上「ったく……結局マンションまで運ばせやがって……。あのくらい能力でも使っとけっつーの、第一位め……」

 一方通行の(正確には黄泉川の住む)マンションを出て、再び歩き始めようとした浜面だったが、背後から何かが背中に飛び付いてきた。

浜面仕上「ーーーうぉ!! な、何だ今度は!?」

フレメア「にゃあ! 浜面、見ぃつけた!」

浜面仕上「その声はフレメアか…。ビックリしたじゃねぇか…」

 背中に飛び付いてきたフレメアをやんわりと引き剥がし、とりあえず頭を撫でておく。

 彼女の傍には垣根の姿も確認できた。

垣根帝督「こんにちは」

浜面仕上「よぉ、第二位」

垣根帝督「お一人とは珍しいですね。今日はアイテムの皆さんはご一緒ではないのですか?」

浜面仕上「あぁ、今日だけ自由にしてもらってな。今の俺はフリーダムだぜ!」

 ピクッ、と二人の眉が動いた気がした。

垣根帝督「……ほぉ…、フリーダムですか…」

フレメア「…にゃあ…」

浜面仕上「………」

 ゾクッ、と背筋が凍てついた気がした……というか凍てついた。

フレメア「浜面ぁ! 大体、遊んでほしいぃ!!」

垣根帝督「そういうことですッ。非番でしたら、フレメアと遊んであげてください!」

浜面仕上「テメエら俺の自由時間を何だと思ってんだ!! もう放っといてくれよ、マジで!!」





 だが浜面の懐は星の大海よりも広く、結局フレメアの相手をしてあげてしまう。

 その際、カブトムシストラップに戻って休んでた垣根をバシンッと一発デコピンしてやった。

 理由? 何かムカついたから。

浜面仕上「ちくしょう……。こうなったら、残り短い時間だけでも、ゆっくりと…静かに…」



黒夜海鳥「…あ」

浜面仕上「…」



 浜面、最後の力を振り絞って全力疾走。

黒夜海鳥「な、あ!? ち、ちょっと待てって! 何でいきなり逃げてんだよ、おい!?」

浜面仕上「がぁぁあああ!! もう嫌だぁぁ! この際たったの一秒でもいい! 安息の時間をくださいませぇぇぇ!!」

黒夜海鳥「訳の分かんねぇこと言って逃げるなよ! おい、浜面! 逃げないで、お願い!」

 キレた際の一方通行口調も出さず、何故か涙目で浜面に叫ぶ黒夜だったが、それ以上に浜面もいっぱいいっぱいである。





麦野沈利「休日とか、そんなの関係ないの。浜面の日常なんて私らがいなくても、とぉーっくの昔に常時お祭り騒ぎよ」

絹旗最愛(……浜面…、超南無三…!)

浜面仕上「ーーー不幸だー!」
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