とある囚人の更生記録

□第02.5話 罪
1ページ/1ページ


 木原が心愛を連れて衣服を買いに行っていた日。

 島田楠男は初の出勤日を迎えていた。

 バイト続きでしっかりとした就職先がなかった島田だが、ついに就職先を見つけたのである。

島田楠男「………ここかぁ……」

 到着した仕事場。

 ロールケーキ屋とは言っても、ただのロールケーキではない。

 50pもの長さがある、とにかく長いロールケーキの専門店だ。

 到底、一人きりでは食べられないだろう。

 島田が入店し、店長と話しを進める。

畑山店長「始めまして。君が、今日からウチに入る新人さんだね?」

島田楠男「はい。島田楠男といいます。宜しくお願いします」

畑山店長「こちらこそ」

 眼鏡をかけた男性店長は、淡々と話し出す。

 しかし、接客法を教えてくれるわけでも、商品の売り文句を教えてくれるわけでもない。

 本人曰く“自由にやれ”とのことだ。

島田楠男「……はぁ……」

 “自由”というより“いい加減”に近いサービス業に首を傾げつつ、島田の社会人生活は始まった。







 島田楠男・享年35歳。

 児童七人の命を奪った殺人犯であり、殺人罪により逮捕されている。

 判決は死刑。

 しかし、刑が執行される前日に脱獄。

 抜け出す際に追いかけてきた警察に撃たれるが、刑務所から逃げることには成功した。

 やがて廃工場内に逃げ込むが、撃たれた傷口から失血し死亡。

 倒れこんだ遺体は、廃工場内で白骨化し発見されることはなく、そのまま解体工事によって存在を消されてしまった。







 そして現在。

 死後の世界にやってきた島田は“0403”の囚人番号を腰に下げた。

 この世界のルールを知り、やるべきことを見つけようと努力してきた。

 理由は簡単だ。転生するため。

 生前の人生を悔いていた島田に、足を止める理由などどこにもなかった。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ