とある禁書の二次創作
□ヒーローの悩み
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「はぁ……不幸だ…」
学園都市の繁華街を、三人の男たちが歩いていた。
ツンツン頭の不幸少年“上条当麻”は、いつもの口癖を呟いている。
「なァにが“不幸だ”だよ。表世界を歩いときながらどの口がほざいてやがる」
「あぁ、まったくだ。いっぺん暗部にでも堕ちて爆発してみりゃいいんだ」
「ねぇちょっと酷くないッ!? こちとら今日の晩御飯が食えるか否かの大問題に直面しているというのに!」
学園都市最強の超能力者“一方通行”と、元スキルアウト兼現在アイテムの下部組織所属の無能力者“浜面仕上”の返答に、上条は食って掛かった。
居候中の腹ペコ純白大食い暴食シスターの食事を考えると、彼の分は用意できそうもない。
ちなみに、これを執筆中の作者の頭に、誰かさんの歯形が付いてしまうのも時間の問題だ。
「食事代に家計の大半を食われるなンざ、よっぽど寂れてるみてェだな」
「上条さんの懐は、いつでも隙間風ピューピューですよ…」
「他人事だが悲しいな」
もはや隙間どころではない。
上条本人を前に、二人はその発言を控えた。
「そんな上条さんとは違って、二人は悩みなんてなさそうに見えるな…」
「あァン? これでも悩みなンざ死ぬほどあるンだがなァ……」
「俺も」
「マジで?」
上条の意外そうな言葉に最初に食らい付いたのは浜面だった。
「“マジで?”じゃねぇよ! 大マジだ! アイテムの連中、俺を良い様に扱き使って、機嫌損ねりゃ“浜/面”だぜ!?」
「最後のァ今一つ分からねェが、第四位のすることァ嫌でも想像がつくな…」
「ん? なんだお前。超能力者の第四位に振り回されてんのか?」
「まぁ、そう言えなくもないな…」
「………」
「………」
無能力者同士の二人は、互いに何かを察し、次の瞬間には握手を交わした。
超能力者に振り回されているのは、自分だけではない。
「でも、一方通行の悩みってのは?」
「あァ〜……」
一方通行は、面倒くさそうな素振りを見せつつも、静かに語りだした。
「クソガキのお守りだ」
「「………」」
「買い物に付き添えば“アレが欲しい”だ“コレが欲しい”だ。かと言って行かなけりゃ“あそこに行きたい”だ“ここに行きたい”だで、チラシやら何やら持ってきて。俺が寝てりゃ“遊ンで”と叩き起こすし、風呂に入ろうとすりゃ“一緒に入ろう”で、終いにゃ寝てる最中に寝台に潜り込ンできやがる。……鬱陶しくて仕方ねェ」
その悩みを聞いた二人は、
「それのどこが悩みだチクショウッ!!」
「上条さんの不幸をなめてんじゃねぇぞ最強ッ!!」
「うォッ!?」
思いっきり激昂した。
「どうせ一方通行のことだ。打ち止めからの好意は全部受け止めてんだろ!」
「欲しい物は買ってやるし、行きたい所に連れて行く! 多少眠くても遊び相手になるし、風呂だって一緒に入ってるだろ!? 終いには寝台に潜ってきたって追い出したりしてないくせに!!」
「はァ!? ふざけてンじゃねェよ三下ども!! 誰がそンなk……」
「「否定できるのか?」」
「……」
最強は押し黙る。最弱たちは構える。
余談だが、一方通行は後に二人のヒーローに夕食を奢ったとか奢らなかったとか……