とある禁書の二次創作

□とある囚人の更生記録【読切版】
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 木原数多は目を覚ました。

 手首には手錠。脚には足枷。

 木製とも金属製ともいえない、大した装飾もない無機質な椅子に座らされている。

木原数多「……なんだ……ここは……」

 木原数多は思い出す。

 十三人の殺し合い。

 悲劇を生む殺戮のゲーム。

 そして、一方通行。

木原数多「……あぁ……そぉいうことか……」

 あの不可思議な黒い翼。

 あの力で、自分は殺されたのだ。

 ここは、もう“あの世”なのかもしれない。

木原数多(つーか、こんな場所が本当に存在するとはなぁ……)

 すると突然、目の前にフードを深く被った真っ黒な男がスゥーッと現れた。

木原数多「……誰だテメェは」

死神の男「私は“死神”だ。木原数多に囚人番号を渡しに来た」

木原数多「あぁ?」

 死神は木原の腰に札を取り付ける。

 そこには“0930”と書かれていた。

木原数多「おい、テメェ何だこりゃ。囚人番号ってのは何なんだ」

死神の男「詳しくは、同室の者から聞くといい」

 そう言い残し、死神の姿がスゥーッと消え始める。

木原数多「テメッ!! 待ちやがれゴラァッ!!」

 木原は暴れようとするが、上手く力が入らない。

 少しずつ、意識が遠のいていくのを感じた。




 ところ変わって、ここは学園都市。

冥土帰し「………やっぱり、麦野さんは来ていないのか……」

 霊安室を視界に捉えながら、病室の状況を見てカエル顔の医者は呟いた。

 そこには、殺戮のゲームから帰還した八人の患者と見舞客がいる。

 しかし今の彼は、もっと大きな問題を抱えている。

 木原数多の遺体だけが、霊安室から忽然と消えてしまったのである。

冥土帰し(誰かの悪戯なら可愛いものだが……、その趣味を理解することは出来ないかもしれないね……)

 冥土帰しは病室を後にした。
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