とある短編の創作小説

□SRP:妹達共鳴計画
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 一方通行は、眼前のミサカと垣根帝督を見据える。

 左耳には、ミサカの右耳で揺れる涙型のイヤリングと同じものが揺れていた。

一方通行「チッ。やァっぱ似合ってねェのかよ。俺の柄じゃねェのは分かり切ってンだろォが。付けてくるンじゃなかったぜ」

垣根帝督「第一位…一方通行…。まさか、こんな場面で対峙できるとはなあ……。それにしても、クローンとお揃いのアクセサリーとはお前らしくもない。一体何があったんだ?」

一方通行「テメェには関係ねェし、教えてやる義理もねェよ」

垣根帝督「そうかよ、ムカつく野郎だ。それじゃあ……とりあえず一発殴られとけッ!!」

 ダンッ!! と駆けだした垣根は一方通行へと距離を詰める。

 振り上げられた腕を見て、一方通行は身構えもせず避けようともしない。

一方通行(馬鹿が…第二位の超能力者だからって油断しやがって…ッ。さァて、どう料理してやr)



 バギッ!! と一方通行の顔面に垣根の拳が叩き込まれた。



一方通行「ーーーッ!!?」

09423号「ーーーぇッ!!?」

垣根帝督「…ははッ!!」

 困惑の表情を浮かべる一方通行は、ズキズキと痛む鼻に手を伸ばすと、指先にはドロッとした感触が伝わる。

 鼻血。

 血を流させる側だった立場が、血を流す側へと逆転していた。

一方通行「な、ン…だ……こりゃ…ッ」

垣根帝督「何だ、だと? 見りゃ分かるじゃねえか」

 拳を構え、一方通行へと再び接近する垣根。

 その動作は同じこと。

 今一度、垣根は一方通行を思いっきり殴り飛ばした。

一方通行「ーーーが、ぁッ!!」

垣根帝督「俺はてめえを殴った。ただそれだけのことだッ!!」

 反射が効いていない。

 否、一方通行の感覚では反射の膜に触れているにもかかわらず、そこを突き破って侵入してきたようなものだった。

垣根帝督「完全無敗の実績は、能力による反射が全てだ。あらゆるベクトルを操作し、どんな攻撃も反射して、数多の敵を一撃で粉砕し殺し尽くす。それがてめえの常識だろ、一方通行? だがな……」



垣根帝督「学園都市、第二位の超能力…。俺の未元物質に、その常識は通用しねえんだよ…ッ」



 破壊に特化した一方通行の力とは異なり、あらゆるものを無限に創造する能力。

 あらゆる常識を正面から覆す垣根の能力には、一方通行の反射など通用しない。

一方通行「……ッ!! ナメてンじゃねェぞッ、このッ、三下がァァァあああああッ!!!!」

 地面の砂利と撒き散らして、散弾銃のように垣根へと撃ち放つ。

 しかし垣根の体に触れた瞬間、まるで見えない壁でもあるかのように砂利が四方八方へと飛んでいく。

一方通行「ーーーッ、クソがァ!!」

 次は直接触れるために垣根へ向かって一方通行が跳躍する。

 腕を伸ばして垣根に触れれば、その時点でゲームオーバーだ。

 しかし……。



 一方通行が伸ばした腕を、垣根はガシッと掴み取った。

 自殺行為にも等しい行動だったが、一方通行の能力は働かない。



一方通行「…は…あ、ァ?」

垣根帝督「悪いな。てめえの能力(ジョウシキ)は解析済みだ。もうベクトル操作なんざ、この俺には効かねえんだよ!!」

 一方通行の腕を掴み取ったまま、肘部分を狙って思いっきり蹴り上げる。

 一方通行の細腕から、ボギッ!! という鈍い音が微かに響いた。

一方通行「ーーーあぐッ、がァァァああああああああああああああああああああああッ!!!!」

 今まで感じたことのない激痛。

 痛みを知らない一方通行にとって、骨折など想像以上のダメージだった。

垣根帝督「最強の力は通用しない、未元物質という名の異物が混ざった空間……。ここは、もうてめえの知る場所じゃねえんだよ」

09423号「一方通行ッ!!」

一方通行「が、あァ…ァ……ッ。く、クソ…が、ァ……ッ」

 無様に地に倒れ伏しても、一方通行は垣根を見上げて睨みつける。

 既に順位など逆転したも同然に思えた。

垣根帝督「さて……、そろそろ終わりにするか…………あ?」

 しかし、垣根の一撃は放たれない。

 何かに気付いた垣根は、やれやれといった様子で溜息を吐き、頭を掻く。

垣根帝督「おいおい……、今日は部外者様のバーゲンセールかよ……。この場合は実験にも支障が出るんじゃねえのか?」

一方通行(……? 何を、言って……)

 と、疑問に思った一方通行の耳にも第三者の足音が聞こえた。

 否、その足音は二人分存在する。

一方通行(…何だ……、誰、が…?)

 腕の痛みに耐えつつ、足音が聞こえた後方へと視線を向ける。

 そこに立っていたのは……。

一方通行「……ッ。な、何…で…ッ」



 何処かで見た覚えのあるツンツン頭の少年と、超能力者の第三位だった。



上条当麻「テメェ…今すぐそいつから離れろ…」

垣根帝督「…あ? 何だ、お前…一方通行の知り合いかよ」

御坂美琴「垣根帝督。妹達は、まだ無事なんでしょうね……?」

垣根帝督「く、はは…。そんでもって、そっちは超能力者の第三位か…。何つー日だよ。俺は笑えばいいのか? それとも嘆けばいいのか……」

上条当麻「……うるせぇよ」

垣根帝督「………あ…?」

上条当麻「ゴチャゴチャ言ってねぇで離れろっつってんだろッ! 聞こえねぇのかッ、三下ッ!」

 垣根の眉がピクッと反応する。

垣根帝督「ほお……、学園都市の第二位であり……今もこうして第一位の一方通行を打ち倒すほどの力を持った俺に向かって……三下?」

 一語一語を確かめるように呟いた垣根は、次の瞬間、上条に向かって飛びかかっていた。

垣根帝督「いいぜッ、大したムカつきっぷりだッ!! 秘密を知った一般人の口は、遠慮なく封じさせてもらうぜッ!!」

 上条へと攻撃を仕掛けようとした垣根だったが、その攻撃が届いた瞬間……。



 パキーンッ!! と何かが砕けたような音が響く。

 垣根の能力は、発動しない。



垣根帝督「………は…?」

 思わぬ事態にフリーズした垣根などお構いなしに、今度は上条が右拳を振るう。

 ドガッ!! と上条に殴られた垣根が、一方通行に続いて無様に地べたを転げまわった。

垣根帝督「ーーーッ!!?」

一方通行「ーーーなッ!!?」

09423号「ーーーぇッ!!?」

 驚愕する三人に対し、美琴は溜息を吐いていた。

御坂美琴「相変わらず、とんでもない力よね……。アンタ、何者よ?」

上条当麻「俺が誰だろうと関係ねぇ。妹達と一方通行を助ける。ただそれだけだッ」

 順位改変計画。

 その実験は、間もなく終わりへと向かっていく。
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