新説 とある学園の死闘遊戯
□第01話 憑
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とある高校。
今頃は教室で上条が授業を受けているであろう時間帯。
一方通行は屋上にいた。
一方通行『…………』
自分は、一度死んだ。
未練が重すぎて、この世に留まっている。
一方通行『未練、か……。あのガキのことだろうな……』
一方通行は、自分の実妹を思い浮かべる。
その上で、上条から聞いた人体発火事件の真相を思い出していた。
一方通行『木原彼岸、だったか……。このクソ野郎が何処にいンのか知らねェが、見つけ出したらどォしてやろォか……』
怒りによって顔が引きつる。
百合子がどんな実験をやらされていたのか、やっと気付いてあげられた自分にも腹が立った。
一方通行『とにかく、情報が欲しい……。今のところの鍵は、上条が言ってた“チンピラ風の男”か』
人体発火事件にて、上条は第三学区の個室サロンを訪れた。
そこで知り合った男は、上条に助力し事件解決を促したのだ。
一方通行『そいつを捜してみるか……。とは言ったものの、その方法もなァ……』
物には触れることが出来るとはいえ、今の一方通行は死人だ。
下手に干渉すれば騒ぎになるかもしれない。
特に、そっち系の研究者は殺到するだろう。
一方通行(まァ、科学サイドに幽霊研究者がいるとは思えねェが、万が一を考えねェとな……)
そう思っていた時、屋上の扉が開いた。
上条当麻「一方通行。もう下校だぜ?」
一方通行『あァ、そうかい』
一応迎えに来たらしい上条だった。
いつのまにか、随分と時間が経っていたようだ。
一方通行(………まさか…)
上条当麻「ん? どうした?」
一方通行『……上条。ちょっと背中見せろ』
上条当麻「せ、背中?」
首を傾げつつ、上条はくるりと後ろを向いて背中を見せる。
一方通行(……まァ、ものは試しだ……)
一方通行は、ゆっくりと上条に近付いていった。
とある高校の昇降口。
上条が靴を履きかえて外に出ると、教室の窓から声が聞こえた。
月詠小萌「上条ちゃーん! 宿題一式、忘れているのですよー!」
上条当麻「…………」
上条は、ゆっくりと教室の窓を見上げる。
担任教師の小萌が手を振りながら、慌てた様子で話し掛けている。
その姿を確認して、上条は笑っていた。
月詠小萌「……か、上条ちゃん……?」
様子がおかしい上条に、小萌は静かに名前を呼んでみた。
上条は返答した。
上条当麻「悪りィな、センセェ。今から大事な用があるンでなァ」
そう言って、上条は歩き出した。
上条を呆然と見送った小萌は、血相を変えて呟いた。
月詠小萌「上条ちゃん……。不良さんになっちゃったのですか…………」
灰色に染めたらしきツンツン頭に、赤いカラーコンタクトを入れていたのだろうか。
上条の瞳孔は、アルビノのように赤かった。