新説 とある学園の死闘遊戯
□第03話 脳
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時は、少しだけ逆上る。
高山たちから一通りの話を聞き終えた一方通行は、やるべきことを言い放つ。
上条当麻「木原彼岸の研究所をブッ潰す」
垣根帝督「妥当だな。木原幻生の腐った研究は分からねえが、くそったれな研究所が近場にあるなら潰しとかなきゃな」
土御門が携帯を操作しているが、その顔は曇っている。
土御門元春「ダメだ。海原のヤツに電話が通じねぇ。情報が“第七学区内の研究所”ってだけじゃ、探しようがねぇぜよ」
手塚義光「その点なら任せな。伊達に情報屋は名乗っちゃいねえからよ」
そう言った手塚は、胸ポケットから携帯を取り出す。
手早い操作で情報をスクロールしていき、やがて目当てに辿り着く。
高山浩太「相変わらず、無駄がないんだな」
手塚義光「褒めんなって。柄にもなく照れるじゃねぇか」
高山浩太「お前が照れたことが、ただの一度でもあったのか?」
手塚義光「………ほんっと、可愛くねぇの…」
雑談を交わしながらも、次々に必要な情報を提示していく携帯画面。
誰もが感心する中、数分も掛からずに目的地の情報が判明した。
手塚義光「ビーンゴ♪」
上条当麻「いい部下見つけたじゃねェか」
垣根帝督「どうやら、そうみてえだな」
手塚義光「“今は”ってことを忘れねえでくれよ、リーダー。用が済んだら、この都市からは出てくんだからよ」
土御門元春「そいつは惜しいな。腕のある情報屋は希少だぜい」
第七学区のほぼ中心。
そこそこ大きな研究所がマークされ、携帯画面に映し出されていた。
上条当麻「ここが、木原彼岸の研究所か……。あのガキが、捕らわれている研究所……」
木原彼岸が、百合子を使っていた研究所。
奥歯を噛みしめる一方通行は、静かに立ち上がる。
上条当麻「行くぞ。クソくだらねェゴミ掃除は、さっさと終わらせるに限る……」
カエル顔の医者の病院。
海原光貴「弱りましたね……。土御門さんの着信に気付かないとは……」
冥土帰し「……それだけ、熱中してくれたんだね。嬉しいような悲しいような……」
決して見返りを求めなかったカエル顔の医者も、背に腹は代えられなかった。
嬉しそうに写真を眺める海原を横目で見ながらも、入手した妹達の脳波データを調べていく。
冥土帰し(さっき倒れたらしい御坂妹さんのものと、比べてみる必要があるかもしれないね……。一体、何があったっていうんだ……)
そこにあったのは、異常な測定値。
意識を保てるか保てないかというギリギリのラインが、そのデータには記載されていた。
冥土帰し「今のままでは、何とも言えないかな……」
海原光貴「はい?」
冥土帰し「何でもないよ」
ふと、カエル顔の医者は窓の外を見る。
たくさんの飛行機雲が、何本も漂っていた。
窓のないビル。
アレイスターは静かに微笑む。
アレイスター『さて、そろそろ第一段階を開始しようか……』
どこか遠い場所で、ガラスが砕ける音が聞こえた気がした。
アレイスター『動作のテストも兼ねてみよう。では、そこの二人をそのまま移動してもらおうか……』
どこか遠い場所で、くぐもった音が聞こえた気がした。
アレイスター『ふむ……、どうやら問題はないようだ……』
アレイスターは静かに微笑む。
そして、ゆっくりと目を閉じた。