新説 とある学園の死闘遊戯

□第04話 知
2ページ/4ページ


 高山は、写メに記載された八ケタの数字を考えた。

高山浩太「おそらく、この数字は“時間”を表している」

上条当麻「“時間”だァ?」

高山浩太「画像データの容量が大きすぎて、質が潰れてしまったのだろう。僅かだが、数字が四つに区切られている」

 言われてみれば確かに、八ケタの数字は二ケタずつ均等に分けられているように見える。

 半角で区切ったのか、コンマを入れていたのかは画質が荒くて判別できない。

手塚義光「均等に四つ分けられたってことはだ。頭から“月・日・時・分”と読めるってわけだな」

土御門元春「それが、この写メを撮った時間なのか? ならばその撮影日には、この場所にこれがあった、てことが分かるわけだな」

 一方通行は、この写メが撮られた日付と時間を計算する。

 その結果は、ある意味では笑えるものだった。

上条当麻「なるほどな……」

土御門元春「分かったのか?」



 写メが撮られた時間は朝の4時。

 日付は、今日だった。



上条当麻「一歩、遅かったってわけだ。クソッタレが……」

垣根帝督「その写メだが、俺も予想が立てられたぜ」

 不意の発言に、皆が垣根に注目する。

垣根帝督「おそらくだが、そこに映ってる一番左の試験管。もう何処にもねえよ」

高山浩太「それはどういう意味だ?」

 垣根は、そこで散らばっていたガラスの欠片を見せる。



垣根帝督「“中身”が何だったのかは知らねえが、その試験管は内側から砕けてる。残りの二つは分からねえが、この試験管内にいたヤツは自由の身になってるはずだ」



 垣根が手にするガラスの欠片は、写メと重ねれば一番左の試験管があった場所に散らばっている。

 曇った試験管内部は三本とも何が入っているのか分からないが、その内の一人が外に出ている。

 確証はないが、可能性は高かった。

土御門元春「シルエットからして人間のようだが……。未知の実験動物じゃないことを祈るぜよ」

上条当麻「チッ、次から次へと……」

 木原彼岸の研究所は破壊した。

 しかし、百合子の姿は何処にもない。

 更には、今日の早朝まであったはずの巨大な試験管が三本、消失した。

 可能性として、その内の一本からは何かが這い出てきているのかもしれない。

手塚義光「あー、ヤダヤダ。嫌な想像しか思い浮かばねぇぜ」

高山浩太「いいことだ。何に対しても、最悪の状況が想像できるのはな」

上条当麻「テメェはポジティブ過ぎンだよ。あらゆる意味でな」

土御門元春「で? これからどうするつもりだ?」

 流れる沈黙の間。

 それを破ったのは、地面に座り込んでいた垣根だった。

垣根帝督「僅かしか残ってねえが、試験管の脱走者は足跡を消してねえな」

上条当麻「あン? どォいう意味だ?」

 垣根の発言に振り返る一方通行。

 ある場所を指差しながら座り込む垣根は、ニヤリと笑っていた。

垣根帝督「微かに残った足跡を分析すりゃ、脱走者はこの方角に向かってる。その先に何があるか、言わなくても分かるだろ?」

 垣根が指差した先。

 それを目にした一方通行は、心底うんざりして呟いた。



上条当麻「まァたテメェの仕業なのかよ……。統括理事長……ッ!」



 “窓のないビル”を睨みつける。

 全体の元凶が、見えた気がした……。







 警備員の黄泉川は、避難誘導を行いながら通話する。

黄泉川愛穂「番外個体が倒れた!? 何があったじゃんよ!!」

芳川桔梗『分からないわ。意識ははっきりしてるんだけど、すごく息苦しそう。辛くて話すこともできないみたい』

黄泉川愛穂「そうか。悪いが、一人で看病してやってほしい。こっちも手が離せないじゃん」

芳川桔梗『分かったわ。愛穂、気を付けてね』

 黄泉川も芳川も気付かない。

 番外個体が苦しんでいるのは、異常な脳波を受信している妹達の余波を受けているから。



 そして、黄泉川たちが相手にしている黒いマスクの侵略者たちの正体こそが……。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ