新説 とある学園の死闘遊戯

□第08話 黒
2ページ/4ページ


 上条当麻は、土御門元春を見つけた。

 脇腹を押さえている土御門が、血を流しながら倒れていたのだ。

上条当麻「土御門ッ!?」

 慌てて駆け寄り、傷口を診る。

 ナイフが深く刺さっており、抜くのは躊躇われた。

土御門元春「あぁ、カミやん……。問題ないぜよ、能力で少しずつだが回復してる……」

 そうは言っても、レベル0の肉体再生では応急処置にもならない。

 とりあえず、倒れ伏している土御門を壁際に移動させた上条。

 土御門は苦しげながら、ここで起きたことを話し始めた。

土御門元春「カミやん……。厄介なことがあったぜ……。この建物には、身近な人間に化けたクソうざい偽者が動いてやがる……」

上条当麻「………やっぱりか…。俺もインデックスに出くわした」

土御門元春「…………どうなった?」

上条当麻「俺の右手が、殺してくれた」

土御門元春「……なるほどな……」

 上条もインデックスの偽者に会っていたため、話しは早かった。

 しかし、ここからが問題だ。

土御門元春「この首輪を外すルールだが、もしかしたら全員の条件に“殺人”が含まれてるかもしれねぇ……」

上条当麻「……!? どういうことだ?」

土御門元春「俺が出会っちまったのは、舞夏だった。偽者だと見破れないほどの、完璧な舞夏だ。この傷は、その舞夏が俺を殺すために仕掛けてきたものだ……」

 ここで区切りをつけた土御門だったが、上条には土御門が言わんとしていることの意味が理解できなかった。

上条当麻「……それが、さっきの話とどう繋がってくるんだ……?」

土御門元春「…分からねぇのか、カミやん?」

 そして土御門は仮説を上げる。



土御門元春「何故ナイフを使ってきた? 普段の舞夏は、ナイフがトレードマークのキャラじゃない。にも拘らず、完璧な舞夏を演じていた偽者は何故わざわざナイフを使ってきたんだ?」



 そこまで聞いて、少しだけ上条にも見えてくるものがあった。

上条当麻「“ナイフを使って、土御門を殺さなければならない理由”が……あったっていうのか……?」

土御門元春「おそらくな……。ナイフ使いじゃなけりゃ、あの舞夏は完璧だった。ナイフを投げてくるメイドなんざ、紅魔館だけで十分ですたい……」

上条当麻「その傷でも、意外と余裕そうだな」

 土御門のボケはさておき、比喩的な結びで繋がるワードも浮かんでくる。

土御門元春「舞夏の首輪解除の条件は“金の銃器”だった。当然だが、これはそのままの意味じゃないだろう……」

上条当麻「土御門を襲ってきた点を考えると、条件の“金”が表しているのは“土御門”のことだって言うのか?」

土御門元春「あくまで仮説だ。そして、もう一つの“銃器”だが、ナイフとの関連点は“殺傷能力のある凶器”ってところだ。ここまで深く考えれば、舞夏の解除条件は“土御門元春を凶器を用いて殺せ”って意味に考えられる……」

上条当麻「仮説の一つなんだろうけど、低い可能性じゃないな……」

 そこで土御門は、自分のPDAを取り出した。

 上条へと手渡し、画面を見せる。

土御門元春「俺の条件は“黄の鏡台”だ。色が何を表してるのかは分からないが、もう一つの“鏡台”は“写し”や“分身”など、文字通り“もう一つ”の意味が考えられる。物なら壊し、人なら殺すことで満たされるんだろうな……」

上条当麻「そういう意味なのかもしれないのか……。なら、俺の解除条件は……」

 上条も自分のPDAを取り出す。

 土御門に見えるように画面を差し出し、条件を読み上げる。

上条当麻「“緑の衣服”……。文字通りなら“緑色の服を着てる奴を殺せ”ってか? もしくは“緑色の物体を破壊しろ”…とか?」

土御門元春「…………」

 上条があれこれと考える中、土御門は一瞬で解除条件を理解したのかもしれない。

土御門元春「……カミやん。これは一種の挑戦状かもしれないぜよ?」

 その顔には、笑みまで浮かんでいた。

上条当麻「挑戦状? どういうことだ?」

土御門元春「この建物に100%いる野郎で、100%緑の衣服を着てる野郎を知ってる……。この場合は“衣服”というより“手術衣”の方が正しいけどな」

上条当麻「………それって、まさか…ッ!?」

 上条の反応を見て、土御門は堂々と言い放つ。



土御門元春「“学園都市の統括理事長・アレイスター=クロウリーを倒せ”……。俺の目には、もはやそうとしか読めねぇぜよ、カミやん!」



 土御門は、解除法を“殺せ”ではなく“倒せ”と解釈した。

 その意味は二つ。

 一つは、アレイスターを殺害することが可能だと言い切ることが出来なかったから。

 もう一つは、なるべく上条には、人殺しになってほしくなかったからだ……。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ