我ら、篠原家!
□プロローグV 「母親」
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この世界では、稀に“能力者(マスター)”が生まれてくることがある。
“マスター”とは“普通の人間には具わることのない能力”を持ってして生まれた人間を指す。
亮助も、その一人だった。
“純粋な美徳(ジュエル・エンヴィー)”と呼ばれる能力を持って生まれた彼は、幼い頃から人間が大好きだった。
正確には、“人を好きになること”が大好きだった。
どんな人にも愛情を向け、どんな人からも好かれていく。
また、あらゆることに挑戦し、技能も少しずつ身に付けていった。
これでまた、たくさんの人を笑顔にできるかもしれない。
何でも出来るなら、どんな人でも笑顔に出来る。
そう思っていた……。
笑顔を失っていた女性が、自分以外の男を切欠に笑顔を取り戻した。
その女性に恋愛感情があったわけではない。
しかし、腹の奥から湧き上がる異変を抑え切れなかった彼は……
どうやったのか。
その二人の首を、刃物もなしに斬り落としてしまった。
その後で気付いたことだ。
彼の右手首から右肘まで、鮮血で真っ赤に染まっていた。