我ら、篠原家!

□プロローグZ 「長男」
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 この世界では、稀に“能力者(マスター)”が生まれてくることがある。

 “マスター”とは“普通の人間には具わることのない能力”を持ってして生まれた人間を指す。


淳司も、その一人だった。

“極上の倦怠感(パーティー・スロウス)”と呼ばれる能力を持って生まれた彼は、幼い頃から甘やかされて育ってきた。


身の周りの世話は、全て他人がやってくれた。

自分が何もしなくても、全く問題が無かった。

それ故に、彼は世間知らずで、基礎的な知識しかなく、生活していく分には支障がなかった。


 家族全員を、一度に失うまでは……。


絶対安全を誇る寝室で眠り、世が明けて目覚めた頃には、家族全員が暗殺されていた。

家中に肉塊が転がっており、真っ赤に染まった廊下からは悪臭が漂っている。

大慌てで家を飛び出したが、自分から行動したことのない彼にとって、たった一人の世界は過酷すぎた。

 やがて、彼は生きることに、疲れてしまう。

 でも、死にたくはなかった……。
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