とある学園の死闘遊戯 罪
□第01話 帰還
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土御門元春「科学でも魔術でもないはずはない。今はどうであれ、そいつは確実にどちらかの人間だったはずだ」
白井黒子「しかし、学園都市の古い記録にも“スヴィル”という名は存在しませんでしたわ」
海原光貴「偽名という可能性があります。名乗り名では当てにならないでしょう」
スヴィルという人物に関することでは、完全に手詰まりだった。
一方通行が先を続ける。
一方通行「問題は、あの野郎が学園都市を潰そうとしてることだ。理由も目的も知らねェが、必ず行動に出るはずだ」
上条当麻「その隙を逃さず、どうにかして取り押さえるってわけか」
土御門元春「だが、一筋縄じゃいかねぇぜよ。一方通行の話しが本当なら、奴はどんな状況も一瞬で設定して操作しちまうんだろ?」
海原光貴「加えて、誰にでも変身できるときましたか……。想像するに苦戦は避けられませんよ」
スヴィル『じゃあ、変身能力は控えることにするぜ』
店内に、別の上条の声が響いた。
上条当麻「ーーーッ!?」
一方通行「テメェ……ッ。スヴィルかッ!!」
全員が立ち上がって、店内を見渡す。
周りのお客も、何事かとキョロキョロ辺りを見回す。
その中に、一方通行の隣にいるはずの上条がいた。
もう一人の上条は、ニヤニヤしながら手を振っている。
一方通行「あ、の野郎ッ!!」
上条当麻「お、俺だ…!?」
本人も本気で驚くほど、そこに座っているのは上条当麻だった。
スヴィル『あぁ、先に言っとくけど、この俺は映像に過ぎないから掴みかかろうとしても意味ないよ』
一方通行「チィッ!!」
そんな気はしていた。
声が通信機器を通しているかのように、くぐもって聞こえている。
その上、それなりに席が離れているはずなのに、妙に声が近くで聞こえるのだ。
スヴィル『本当の俺は別の場所にいるよ。今日はただの挨拶だ』
一方通行「……テメェは、これからこの都市を潰す気か」
スヴィル『少しずつね。俺の優秀な仲間たちが学園都市中を襲い始めるよ』
どうやら、スヴィルの目的に賛同している仲間がいるらしい。
スヴィルは、片手三本ずつ指を立ててみせた。
一方通行「何のマネだ?」
スヴィル『人数さ。俺の仲間はたった六人だ。それぞれに使命を与えて、学園都市に放ってみようか?』
垣根帝督「ムカつくなあ、てめえ。手札を明かすのは余裕だからか? それともただナメてるだけか? ああ?」
垣根の問いにはまるで応じない。
あくまでも挨拶で終わらせる気なのかもしれないが、そういうわけにもいかなかった。
土御門元春「“魔学サイド”といったか。それは何なんだ? お前たちはどういった法則に従っている」
土御門の問いには少しだけ反応した。
わざとらしく悩むふりをして、ふとスヴィルは顔を上げる。
スヴィル『科学と魔術に別れた世界なんて寂しいだろ? 俺は、それらの力を両立させて仲良く一つにしたいのさ』
白井黒子「なんですって……?」
スヴィル『“魔学サイド”は科学にも魔術にも属さない反面、二つの力を平等に振るう法則を持ってるのさ。俺は世界中から、その力を生まれ持った選ばれし六人を捜しだしたんだよ!』
おそらく、それが彼の言っていた六人の仲間。
科学側も魔術側もなくし、二つの世界を合わせることが目的。
ならば、学園都市を潰す目的というのは、両サイドを一度滅ぼすつもりなのかもしれない。
海原光貴「世界中に広がる魔術文化と、日本の学園都市に重点を置いている科学文化。どちらが簡単に滅ぼせるかとなれば、科学サイドの方が早く終わるとでも?」
スヴィル『そんなに簡単には考えちゃいないさ。でも、学園都市を潰す目的としては正解だよ』
スヴィルの目的は、科学と魔術の絶滅。
そして、新たにお互いが両立できる仲の良い新サイド“魔学サイド”の完成。
その手始めとして、世界中から捜しだした“選ばれし六人”とやらで学園都市を潰す気らしい。
一方通行「俺たちが、ただ黙ってやられてやるとでも思ってンのかァ?」
スヴィル『それが有り難いけど、そういうつもりもないんだろ?』
スヴィルは、何でもないかのように返答する。
いい加減に腹立たしい反応だったが、映像相手に攻撃しても意味がない。