とある学園の死闘遊戯 罪

□第01話 帰還
4ページ/4ページ


 不意に、映像のスヴィルが立ち上がった。

 その視線は本物の上条を捉えている。

スヴィル『安心しろ、もう変身能力は使わない。でも、このまま上条当麻の姿でいると、正直ややこしいよな? だから……』

 スヴィルは、左手を頭の上に、右手を目元に持っていく。

 スゥッとスライドさせた瞬間、髪と瞳孔の色が変化した。

 真っ赤なツンツン頭と、蛇のような黄色い瞳孔を持つ上条当麻がそこにいた。

スヴィル『この姿で“スヴィル=ペァゴーマ”の形を取らせてもらうぜ』

一方通行「あくまでもテメェの素顔は明かさねェンだな」

スヴィル『素顔って嫌いなんだよ。上条当麻には悪いけど、顔の原形を貸してもらうぜ』

 スヴィルの体がスゥッと消えていく。

 どうやら映像を切るつもりらしい。

上条当麻「ま、待てッ!」

 上条の呼び止めに、スヴィルはキョトンとする。

 返答を待たずに、上条はスヴィルに問いかけた。





上条当麻「“あの事件”は、お前の仲間の仕業なのか?」





 その問いに、スヴィルはニヤりと笑って返答した。

スヴィル『さぁな、調べてみればいい。ただ、そうだなぁ……。科学サイドが能力者、魔術サイドが魔術師なら、魔学サイドにも人種名が必要だな』

 もうほとんど見えなくなった状態で、スヴィルは最後に言い残した。



スヴィル『俺たちは“トリックスター”だ。忘れるなよ、能力者!』



 言い終わった時には、スヴィルの姿は何処にもなかった。







 魔学サイドのトリックスター。

 スヴィルを含め、七人の敵が明らかとなった今。

 一方通行たちは少しだけ話題を逸れることに。

 上条が口にした“あの事件”というものだ。

 そして、それが意味するところには、一方通行がリフレクトパークで呟いていたことにも繋がる。



 件の事件とは、現在進行形で発生しており。

 つまり、まだ解決していない事件なのである。



一方通行「確か“大人も子供も問わずに、学園都市中から女性の行方不明者が続出”だったか?」

白井黒子「はい。警備員も風紀委員も全力で調査していますが、被害者の共通点が女性だということ以外は情報がないため、まるで進展しませんの」

海原光貴「自分も顔を変えて学園都市中を回ってみたのですが、好ましい情報は入手できていません」

 今の学園都市は、次々と女性がいなくなるという事件に不安を抱えている。

 のん気に構えているのは少数の男性であり、神隠しが起きているのではないかと噂する者もいるらしい。

一方通行「“住人を減らす”って意味なら、トリックスターの可能性もあるってことか……。どこまでもウザッてェ」

上条当麻「とりあえず、ここで今日は解散しとこうか。この件はもう少し情報がないと手の付けようがないし」

 土御門が伝票を持ってレジへ向かう。

 その後ろをぞろぞろと歩き、それぞれが解散に向かっていく。

番外個体「あざーしたー」

一方通行「健気だなァ、オイ。ここで働いてンのかよ」







 リフレクトパークを出ると同時に、それぞれが別の帰路を辿る。

白井黒子「ふぅ……、久々に疲れましたわ……」

 白井も常盤台の寮に帰ろうとした時、不意に背後から声を掛けられた。

????「あ、あのッ」

 白井が振り返ると、背の低い女の子がそこにいた。

 質素なヘアピンをストレートの長い黒髪に挿し、クリクリとした丸くて大きな瞳が可愛らしく。

 身長が白井の肩くらいしかない女の子は、常盤台中学の制服を着ている。

白井黒子「花一さん? どうなさいましたの?」

 花一と呼ばれた少女は、常盤台中学に通う白井の同級生だった。

 その様子から、リフレクトパークから追いかけてきたらしく、肩で息をしていた。

 白井の顔を真っ直ぐに見上げると、目に涙を溜めて口を開いた。



花一籠目「み、御坂様が……。御坂美琴様が、いなくなってしまいましたッ!!」



  【第02話につづく……】
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ