とある学園の死闘遊戯 罪
□第01話 帰還
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不意に、映像のスヴィルが立ち上がった。
その視線は本物の上条を捉えている。
スヴィル『安心しろ、もう変身能力は使わない。でも、このまま上条当麻の姿でいると、正直ややこしいよな? だから……』
スヴィルは、左手を頭の上に、右手を目元に持っていく。
スゥッとスライドさせた瞬間、髪と瞳孔の色が変化した。
真っ赤なツンツン頭と、蛇のような黄色い瞳孔を持つ上条当麻がそこにいた。
スヴィル『この姿で“スヴィル=ペァゴーマ”の形を取らせてもらうぜ』
一方通行「あくまでもテメェの素顔は明かさねェンだな」
スヴィル『素顔って嫌いなんだよ。上条当麻には悪いけど、顔の原形を貸してもらうぜ』
スヴィルの体がスゥッと消えていく。
どうやら映像を切るつもりらしい。
上条当麻「ま、待てッ!」
上条の呼び止めに、スヴィルはキョトンとする。
返答を待たずに、上条はスヴィルに問いかけた。
上条当麻「“あの事件”は、お前の仲間の仕業なのか?」
その問いに、スヴィルはニヤりと笑って返答した。
スヴィル『さぁな、調べてみればいい。ただ、そうだなぁ……。科学サイドが能力者、魔術サイドが魔術師なら、魔学サイドにも人種名が必要だな』
もうほとんど見えなくなった状態で、スヴィルは最後に言い残した。
スヴィル『俺たちは“トリックスター”だ。忘れるなよ、能力者!』
言い終わった時には、スヴィルの姿は何処にもなかった。
魔学サイドのトリックスター。
スヴィルを含め、七人の敵が明らかとなった今。
一方通行たちは少しだけ話題を逸れることに。
上条が口にした“あの事件”というものだ。
そして、それが意味するところには、一方通行がリフレクトパークで呟いていたことにも繋がる。
件の事件とは、現在進行形で発生しており。
つまり、まだ解決していない事件なのである。
一方通行「確か“大人も子供も問わずに、学園都市中から女性の行方不明者が続出”だったか?」
白井黒子「はい。警備員も風紀委員も全力で調査していますが、被害者の共通点が女性だということ以外は情報がないため、まるで進展しませんの」
海原光貴「自分も顔を変えて学園都市中を回ってみたのですが、好ましい情報は入手できていません」
今の学園都市は、次々と女性がいなくなるという事件に不安を抱えている。
のん気に構えているのは少数の男性であり、神隠しが起きているのではないかと噂する者もいるらしい。
一方通行「“住人を減らす”って意味なら、トリックスターの可能性もあるってことか……。どこまでもウザッてェ」
上条当麻「とりあえず、ここで今日は解散しとこうか。この件はもう少し情報がないと手の付けようがないし」
土御門が伝票を持ってレジへ向かう。
その後ろをぞろぞろと歩き、それぞれが解散に向かっていく。
番外個体「あざーしたー」
一方通行「健気だなァ、オイ。ここで働いてンのかよ」
リフレクトパークを出ると同時に、それぞれが別の帰路を辿る。
白井黒子「ふぅ……、久々に疲れましたわ……」
白井も常盤台の寮に帰ろうとした時、不意に背後から声を掛けられた。
????「あ、あのッ」
白井が振り返ると、背の低い女の子がそこにいた。
質素なヘアピンをストレートの長い黒髪に挿し、クリクリとした丸くて大きな瞳が可愛らしく。
身長が白井の肩くらいしかない女の子は、常盤台中学の制服を着ている。
白井黒子「花一さん? どうなさいましたの?」
花一と呼ばれた少女は、常盤台中学に通う白井の同級生だった。
その様子から、リフレクトパークから追いかけてきたらしく、肩で息をしていた。
白井の顔を真っ直ぐに見上げると、目に涙を溜めて口を開いた。
花一籠目「み、御坂様が……。御坂美琴様が、いなくなってしまいましたッ!!」
【第02話につづく……】