とある学園の死闘遊戯 罪
□第02話 病院
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一方通行はカエル顔の医者と話をすることにした。
病院内に関することなら、病院の主に聞くのが一番だ。
冥土帰し「一先ず、おかえりと言っておこうか」
一方通行「ンな挨拶なンざ、どォでもイインだよ。超電磁砲の最近の行動を吐けっつってンだ」
冥土帰し「挨拶は大事だよ? それにしても、本来なら患者の個人情報は絶対機密なんだけどねぇ……」
ゴソゴソとポケットの中を探り、小さな鍵を取り出した。
冥土帰し「統括理事長さんの頼みなら仕方がない。それに、ある意味ではアレイスターを救ってくれたようなものだからね。彼も僕の患者なんだ」
一方通行「知ったことか。学園都市を投げ出して逃亡した野郎なンざ、いちいち気に留めておけねェよ」
カエル顔の医者は、デスクの引き出しの鍵を開けて、中から三枚ほどの書類を取り出す。
冥土帰し「ここ最近の、御坂美琴さんの行動記録。その間の病院内の出来事と、表の学園都市の様子を箇条書きでまとめておいたよ」
一方通行「………やけに準備がイイじゃねェか」
冥土帰し「僕は患者に必要なものなら何でも揃えるよ。忘れたのかい? 君だって僕の患者だということを」
一方通行「…………」
一方通行は書類を受け取って歩き出す。
背後では、カエル顔の医者が背中を見送っていることだろう。
一方通行が病院内の廊下を進んでいると、とある病室の前に立ち尽くす少女がいた。
花一である。
一方通行「…………」
そっと近付いた一方通行は、病室前のネームプレートを読んだ。
一方通行「……“渡野鉛恵(ワタシノナマエ)”、か……」
花一籠目「ーーーッ!?」
ようやく隣に立つ一方通行に気付いたらしく、大きく肩を震わせた。
花一籠目「ぇ……ぁ、の…………」
一方通行「いなくなちまったのか」
花一籠目「…ぇ?」
一方通行「使用者のいる、無人の病室なンざ珍しいだろォが」
病室を覗くと、まるで誰も使っていないかのように綺麗に片付けられていた。
しかし、ネームプレートがある以上は、この病室は渡野という患者のもので間違いない。
花一籠目「ナッちゃんは、私の一番の友達で……。御坂様より、一週間も前に行方不明に……」
白井が言っていた“花一の親友”というのも、この渡野という子で間違いないだろう。
花一籠目「ナッちゃん……。無事に…、見つかりますよね……?」
一方通行「…………」
目に涙を溜めて、上目遣いで尋ねてくる花一に、一方通行は語りだした。
一方通行「俺の連れは、俺の妹を守って死ンだ。俺にとっちゃ、どっちも助け出さなきゃならねェはずだったのに」
失った無能力者のヒーローを思い、一方通行は本音を返す。
花一は、それを黙って聞いていた。
一方通行「最悪の場合も覚悟しておけ。世の中、そォそォ上手くいくこともねェンだからよォ」
花一籠目「…………」
それを聞いても、花一は泣きだしたりしなかった。
ここで泣いたら、きっと目の前で友達を失ったであろう一方通行に失礼だと思ったからだ。
もちろん、友達を失うなんて最悪な結末は望んでいない。
でも、もしも何の覚悟も出来ていなくて、そんな結末を迎えていたら……。
花一は、きっと正気ではいられない。
花一籠目「あ、あの……」
一方通行「悪りィが、事件解決に急いでる。テメェも早く友達に会いてェなら、俺たちの邪魔ァしねェことだ」
さっさと言い残して、一方通行は歩き出した。
ちょっとした、心の余裕を与えてくれた一方通行の背中を。
花一は、何となく追いかけていた。